第3波でドタバタ「修学旅行」を巡る学校の苦慮 京都や沖縄は大幅減少だが、地方・地元に脚光

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修学旅行の「安・近・短」傾向が増える中で、昨年まで修学旅行の受け入れとは無縁だった自治体がにわかに脚光を浴びている。日本を代表する洋食器の生産地として知られる新潟県の燕市である。

11月末現在の受け入れ実績は県内・県外あわせて52校(県外は6校)、1632人となっている。この先も3月末までに10校が予定しているため、総訪問者数は2000人を超える。

児童・生徒たちは産業観光の拠点である燕市産業史料館と工場見学を組み合わせたコースを巡ることで、地場産業のモノづくりについて深く、分かりやすく触れることができる。

市は児童・生徒向けに学習用ハンドブックを作成し、産業史料館を訪れた子どもたちには市製のカレーチャーハンスプーンを贈呈するなど歓迎している。燕市を訪れた学校の関係者は、燕市を選んだ理由について「洋食器など世界に誇れる産業があり、見学を好意的に受け入れてくれるため」と語っていた。

修学旅行と無縁だった自治体が脚光浴びる

燕市産業史料館の担当者は、一連の動きを歓迎しつつ、こう分析している。

「マイクロツーリズムが注目される中、近隣県ならびに県内の学校にとって、ここ燕市は新潟県のど真ん中に位置し、近場の学習旅行先としては立地も良く、気軽にお持ち帰りできる体験と、モノづくりについて学べる最適な土地だったようです」

燕市での体験学習の様子(写真:燕市提供)

 鈴木力市長は自らのブログに「燕市及び燕市観光協会では、ここ数年、産業観光の誘致・推進に取り組んできました。それがこのような形で実を結ぶとは嬉しいかぎりです」とつづっている。

コロナ禍における修学旅行地の変更は、児童・生徒たちにとっても引率する教師にとっても、ふるさと、地方の魅力、実力を見つめ直す絶好の機会となっている。モノづくりのすごさ、ふるさとの自然、食の豊かさを身に染みて感じた子どもたちが、地元や地方への愛着を強め、やがて定着することになるかもしれない。地方活性化、一極集中是正の観点からも、これを機に従来の修学旅行のあり方を見直す時期ではないだろうか。

山田 稔 ジャーナリスト

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やまだ みのる / Minoru Yamada

1960年生まれ。長野県出身。立命館大学卒業。日刊ゲンダイ編集部長、広告局次長を経て独立。編集工房レーヴ代表。経済、社会、地方関連記事を執筆。雑誌『ベストカー』に「数字の向こう側」を連載中。『酒と温泉を楽しむ!「B級」山歩き』『分煙社会のススメ。』(日本図書館協会選定図書)『驚きの日本一が「ふるさと」にあった』などの著作がある。編集工房レーヴのブログも執筆。最新刊は『60歳からの山と温泉』(世界書院)。

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