メーカー的思考に陥らず、ユーザーのニーズにあった技術力が必要--佐藤光由・ニッケ社長

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--手応えはどうか。

海外では、ニッケが一貫生産できることを知らないユーザーがまだ多い。ウール、あるいは合繊などニッケには繊維に関することであればトータルに提案できるノウハウがいっぱい詰まっているのに、まだまだ存在感が薄い。たとえば、しわになりにくい生地があるのに、中国ではアピールできていない。ドレスなどブライダル向けのアパレルに十分提案できるはずだが、まだ不十分。ようやく引き合いも出てきた。

国内でも、得意のユニフォームは多品種少量で、かつ短期間で納品することが必要。これが可能なのはニッケだけだ。その実力を持って、海外でもっとアピールしていく。海外営業部にはその道に堪能な人材を集めた。ものづくりがわかる営業マンで不退転の決意で臨みたい。

--佐藤社長自身、技術畑出身だ。技術力には定評があるが、まだ十分ではないのか。

ユーザーのニーズに合わせる技術力が必要ということだ。ものづくりの側にいると、営業からの情報では不十分で、ユーザーが何を望んでいるのか伝わりにくい。メーカー的川上思考ではニーズに合わせられない。

だから、つくる側と売る側が一体となった体制を整える。技術、営業、マーケティング、デザイナーが一緒になって、これまでの視点を少し変えるだけでもいろいろなアイデアが出てくる。それでもメーカー的川上思考になりやすいので、マーケティングなどいろんな視点から見極めないと。内需は弱いといっても、切り口を替えればプレミアム感を訴え、もっと売れるものができるのではないか。停滞しているのは、メーカー的な思考に陥り、ユーザーの視点を失っているためだ。

今年2月には愛知・一宮に製造部長、技術部長、企画開発部長を集めた。大口生産は製造部長が統括し、責任の所在をハッキリさせた。工場に企画や開発のスタッフも集めた。また研究開発センターも設立したが、ここは「編集」工学機能を発揮できるようにした。「編集」とは、自社の技術だけでなく、大学や他の研究機関との提携も図っていく、ということ。儲かる視点を持って、開発を行っていく。それには積極的に外部に目を向けていくことが必要だ。同センターには自ら判断できるスタッフを配置し、見極めを行っていく。技術におぼれることなく、全社的に外向きに情熱を持ってやっていきたい。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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