リモートの生産性は出勤に比べどれぐらい劣るのか勝るのか、興味深いところですが、スタンフォード大学のニコラス・ブルーム教授はある中国の旅行会社を対象に調査を行い、「リモートでは生産性が13%上がった」と結論づけました。
ポストコロナのリモート比率は20%、週に2日
教授の調査によれば、2020年5月現在で、年収2万ドル以上のアメリカ人の42%がフルタイムでリモートワークをしており、「70%の企業がリモートに肯定的」という結果でした。
アメリカではかつて「リモートワークは機能しない」という認識が強く、ヤフーやIBMといった大企業が導入し、撤回するといった経緯がありました。しかし、「ツールの発達」「Wi-Fi環境の改善」などにより、そうした負のイメージは払拭され、今後も定着していくとみられています。
一方で、社員の間ではそのとらえ方に差があります。
「ポストコロナでもリモート勤務をしたいか」という問いに、20%が「したくない」、25%が「毎日したい」、残りの55%が「使い分けたい」と反応は分かれました。
ブルーム教授は、社員のリモート比率はコロナ前が全社員の5%、コロナ時代は40%、ポストコロナは20%ぐらいになり、「週のうち2日程度がリモートで」という形で収まるのではないかと予測しています。
「リモートのデメリット」としてよく指摘されるのは「社員が同じ物理的空間にいることで生まれる「偶然の出会い」(セレンディピティ)が喪失してしまうこと」です。
「Water Cooler(水飲み場)での出会いやおしゃべりが、創発やイノベーションの機会を作り出す」という発想から、多くのアメリカ企業がそうした出会いを促進するよう工夫をしてきました。
ブルーム教授によれば、実際に会社で日々顔を合わせる人たちの間では関係性が深まっても、そういった一足飛びの絆が作りにくいことから、「リモートの人たちは出世が遅れがちになる」という調査結果もあるそうです。また、「社員の孤独感」も懸念材料の1つとなっています。
今後、リモートは常態化していくわけですが、とくに日本企業の場合、戦略的というよりは、「見切り発車で場当たり的な『リモート推奨』による負の影響」が懸念されます。
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