パナソニック「持株会社化」でも見えぬ成長戦略 事業整理を継続し、収益力の回復が最優先に
業績低迷にあえぐ巨艦が動き出した。パナソニックは11月13日、常務執行役員の楠見雄規氏(55)が社長に昇格する人事を発表。現社長の津賀一宏氏(64)は代表権のない会長に退く。2021年6月に行われる株主総会を経て、正式決定される見通しだ。
併せて、2022年4月に持ち株会社制へ移行し、社名を「パナソニックホールディングス」に変更すると発表した。
家電などを担う中核事業会社のほか、車載電池など主力事業ごとに子会社を設立する体制になる。11月17日に行われた経営方針説明会では楠見、津賀両氏がそろって登壇。持ち株会社化の狙いについて、「これまでより意思決定を速め、各事業の競争力を高めていく」と声をそろえた。
志半ばでの社長交代
パナソニックのトップ交代は実に9年ぶりとなる。津賀氏は2012年の社長就任後、経営再建に集中。過剰投資で巨額赤字に陥っていたプラズマテレビからの撤退など「脱家電依存」を進め、価格競争が激しいB to C(消費者向け)事業から、車載関連や電子部品などB to B(企業向け)事業での収益拡大を進めてきた。
ただ、「止血」作業はなかなか終わらず、2019年にも半導体事業や液晶パネル生産の撤退発表などが相次ぎ、不採算事業の「モグラたたき」(津賀氏)に追われた。この1~2年、津賀氏は「辞められるなら辞めたい」と周囲に漏らしてきた。
長く社長交代ができなかった理由の1つはまさに不採算事業の撲滅が終わらず、「いいタイミング」(津賀氏)がなかったからだ。近年のパナソニックではトップの任期は6年間という不文律があるが、津賀氏は30年ぶりの長期政権になっていた。
それでも改革道半ばでの退場になる。2020年3月期の売上高は7兆4906億円で、横ばいが長年続く。2021年3月期も新型コロナウイルスの影響で減収予想だ。純利益見通しも1000億円と前期の半分に満たず、ここ数年収益は低迷したままだ。
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