それには2つの理由があります。1つは、現在のパリは、このドラマとは真逆の状況にあることです。カフェも、ギャラリーも、レストランも、テラスも、ブティックも開いていなければ、集まりも、キスも、恋人たちの姿もありません。たとえ、多くのテレビやドラマ評論家が、アメリカ人はいまだにパリを偏った視点で見ていると否定的だとしても、ドラマに出てくる風景に懐かしさを感じずにはいられないのです。
2つ目はタイミングです。私はちょうど、アメリカ大統領選の結果を不安な気持ちで待っていた時に、このドラマを見ました。新たな大統領の誕生を望みながら、結果が出るまでの長すぎる時間、『エミリー、パリへ行く』について調べたり、周りの人に話を聞いたりしていました。これは改めて、私たちが持っている固定観念やステレオタイプについて考える機会にもなりました。
フランス人は仕事をしない?
実際、このドラマは「アメリカ人が思う」フランス、あるいはフランス人に対する固定観念やイメージがいろいろなところに散りばめられています。今回はその中でも特に気になったものをいくつか挙げてみたいと思います(中にはネタバレもありますので、ドラマをまだ見ていない人は気をつけて下さいね)。
フランス人は仕事に精を出さず、仕事を始めるのはお昼前
ドラマの中で、「Americans live to work, we work to live(アメリカ人は仕事に生き、フランス人は生きるために働く」とフランス人の同僚が、「ル・フロール・アン・リル」というカフェでエミリーに言う場面があります。確かに、ある意味では、フランス人はアメリカ人よりずっと長い休暇(バカンス)を取るために働きます。
一方、フランス人の生産性は非常に高く、就業時間が短くても、就業時間中は熱心で、かなり効率がいいというのが事実です(ストライキがなければの話ですが……)。
フランス人男性はナンパに熱心
エミリーの上司で、とてもおしゃれなパリジェンヌのシルビーは、取引先と不倫関係にある設定となっています。これも典型的な固定観念で、フランス人男性(このドラマの登場人物はみんなイケメン)はみな「ドラゲ(ナンパ)」に時間を費やし、セックスはパリジャンたちの人生で最も重要な問題であるかのように描かれています。
フランスのアパートは建物も設備も古い
アパートにはエレベーターがなく、コンシェルジュ(管理人)は、いつも機嫌が悪い上、スパイみたいな行動ばかりしているし、配管工事の問題も多い……。これらはおそらく、18世紀に建てられた建物に住んでいるから起こるのかもしれません。
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