中国製「フリーゲージトレイン」は"本物"なのか 実用化できれば中国メーカー欧州展開の武器に

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この軌間可変式車両は、2022年に開催予定の北京冬季オリンピックに間に合うよう急ピッチで開発を進めるとしている。また、完成したプロトタイプを基にオーダーメイドでカスタマイズできるフリーゲージ車両の受注も、すでに受け付けを開始する準備ができている、と同社は述べている。試作型が公表されたばかりにもかかわらず、すでに受注を開始する用意がある、というのは驚きである。

軌間可変装置は、走行に関わる車輪や車軸などが可動部品となるため、その部分の信頼性と強度を確保しなければ走行中に破損する恐れもある。強度を増すために各部品の厚みを増すなどの対策を採ることもできるが、すると今度は重量が増加する。あまりに重量が増してしまうと、路線によっては軸重(1軸当たりにかかる重さ)の関係で入線できない路線も出てくるだろうし、高速運転にも不向きとなる。

実際、日本の長崎新幹線で採用が期待されたフリーゲージトレイン(FGT)は、試運転中に車軸の摩耗が見つかったことに加え、最高速度が時速260kmに制限されるため、山陽新幹線内における運転が難しいことが、開発断念に至った主な原因だ。

「軌間可変」元祖はスペイン

軌間可変装置は、複数の線路幅を持つ国や、近隣諸国と異なる軌間を採用した鉄道において、列車の直通運転を行うために極めて重要な技術である。

スペインとフランスの国境に位置するセルベール。左側はフランスの標準軌(1435mm)、右側はスペインの広軌(1668mm)で、線路幅が直通列車の足かせとなる。スペインも高速鉄道は標準軌を採用している(筆者撮影)

世界最初の実用的な軌間可変装置を開発したのは、スペインのタルゴ社だった。スペインは、1992年に開業した高速鉄道AVEを除き、在来線はほぼすべて1668mmの広軌を採用している。タルゴ社は広軌路線において安定した走行性能を得るため、車軸のない左右独立車輪を採用したタルゴ型客車を開発したが、そのシステムをベースに軌間可変機能を開発、1968年に軌間可変式客車「タルゴⅢ RD」を誕生させた。

スペインはタルゴ社のほかにCAF社もBRAVAシステムという軌間可変技術を開発しており、こちらは日本のFGTと同様、車軸のある構造の車輪を用い、電車や気動車など動力車にも採用されている。ただ、FGTと構造上大きく異なる点は、モーターを車体に搭載し、そこからプロペラシャフトを通じて台車側に動力を伝達するという点だ。

次ページ日本のFGTとスペイン方式の違い
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