中国製「フリーゲージトレイン」は"本物"なのか 実用化できれば中国メーカー欧州展開の武器に

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昨今、欧州における環境問題への意識は日本で考えられている以上に高まっており、西欧や中欧を中心に鉄道が再び脚光を浴びているが、それがさらに東へと広まったとき、足かせとなるのが軌間の問題だ。

中国CRRCが製造した初の欧州大陸向け新型電車シリウス。同社は欧州進出を積極的に進めようとしており、軌間可変装置の実用化は大きな武器となるはずだ(筆者撮影)

欧州への進出に必死なCRRCとしては、もしこの軌間可変装置が実用化できれば大きなセールスポイントとなることは間違いなく、スペインメーカーの牙城を切り崩すことも考えられる。だからこそCRRCにとって、この軌間可変装置の持つ重要性というのは計り知れない大きなものだ。

中国が高速鉄道建設において、他国の技術を導入したとはいえ、わずか十数年で世界一の高速鉄道路線網を構築してしまったことは疑いようのない事実だ。他国の力を借りたものの、「自分たちの力で世界一になった」と喧伝することを快く思わない人は多いが、それを差し引いても、今の中国の高速鉄道網を20年前に予想できた人はいないだろう。

ただ、筆者のみならず世界中の多くの人たちが感じるところであろうが、中国は何をするにしても恐ろしく仕事を進めるのが早く、時にそれが「命綱のない綱渡り」のように見えてしまうことがある。

開発は安全第一で

中国は研究開発や製造などのスピードは非常に早い。今回の軌間可変式高速車両も本気で2022年までに営業運転にこぎつけ、近隣諸国へ列車を直通させる気でいるだろう。設計最高速度が時速400kmだから、350~360kmくらいの営業最高速度を目指すのではないだろうか。

しかし前述の通り、軌間可変装置は安全性に直結する足回りに可動部品が多く、通常の車輪と比較してもより高い耐久性や信頼性が求められる。気象条件が過酷な地域を走行する想定もあることから、各パーツにかかる負担はより大きいものとなるはずだ。

筆者は過去に何度か、技術開発や製造、路線建設のスピードを誇示する中国のやり方を危惧し、疑問を呈してきた。「数年先には量産できる」「数年後には建設が完了する」などと、メーカーや政府が誇らしげに宣言する姿を見るたび、2011年に浙江省温州市で発生した高速鉄道事故を思い出さずにはいられないし、その後も地下鉄のトンネル崩落や高架橋の落下事故など、建設・製造を急ぐあまり手抜きがあったと疑われるような事故を何度も目にしている。

だからこそ、開発スケジュールは無理が生じるようなものであってはならない。ましてや世界一を誇示したり、受注を獲得したりするためだけに信頼性や安全性を二の次にして開発を急ぐようなことは絶対にあってはならない。人の命を預かる公共交通機関においては、安全や信頼性の高さこそ最優先されるべきポイントである。

橋爪 智之 欧州鉄道フォトライター

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はしづめ ともゆき / Tomoyuki Hashizume

1973年東京都生まれ。日本旅行作家協会 (JTWO)会員。主な寄稿先はダイヤモンド・ビッグ社、鉄道ジャーナル社(連載中)など。現在はチェコ共和国プラハ在住。

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