中国製「フリーゲージトレイン」は"本物"なのか 実用化できれば中国メーカー欧州展開の武器に

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日本で苦労した技術を50年以上も前のスペインがいとも簡単に、と思うかもしれないが、タルゴ型客車の場合、独立車輪という特殊構造のうえ、動力源を持たない客車であり、最高速度も時速160km(その後登場した車両は200kmに向上)など条件がまったく異なる。そのまま比較するのはナンセンスな話だ。

ドイツのベルリンとロシアのモスクワを結ぶ夜行列車ユーロナイト。途中で線路幅が変わるため、スペインのタルゴ型客車を採用している(筆者撮影)

日本のFGTと同様に車軸の付いた構造のCAF社製BRAVAシステムを搭載したS120型電車も、走行安定性を確保するために最高速度は時速250kmに抑えられており、最速列車のAVEではなく、下位に位置するAlviaという種別で運行されている。「のぞみ」では運転できないので、「こだま」で運行しているようなものだ。軸重も15.6tで、日本の新幹線規格よりかなり重い。

FGTは軸重11.5tで最高時速270kmというスペックであり、スペインで営業しているこれらの車両と比較すれば、かなり高いレベルの要求が出されていたことがわかる。

欧州は「軌間可変」の需要が多い

ヨーロッパには、西欧と東欧で軌間が異なる国や地域があるため、ほかにも軌間可変技術がある。

スペインのシステムはFGTと同様、走行用の線路の外側に設置した車体支持用レールによって軸箱を支え、車輪に車体重量がかかっていない状態で車輪の幅を変換する仕組みだが、ポーランドで開発されたSUW2000と称するシステムは、車輪の中に収められた変換システムのおかげで、車体の重量が車輪に載った状態で、そのまま専用の軌間可変レールの上を通過するだけで変換ができる。ドイツのDBAG/Rafil TypeVというシステムも、これとほぼ同じ構造だ。ただし、これらは客貨車用の軌間可変装置で、動力車用ではない。

今回のCRRCの試作車両は詳細なスペックを公開していないが、最高時速は400kmとのことで、日本のFGTに近い、あるいはそれを超える性能を有していることが考えられる。しかもそれを短期間で実用化させるというのだから恐れ入る。

量産のめどが立った場合、CRRCが公表している通り、まずは自国とロシア方面など、広軌を採用している国々への直通運転用として導入されることは間違いないだろう。だが、それだけではなく、標準軌(1435mm)の西欧・中欧と広軌(1520mm)の東欧・ロシアを結ぶ列車など、欧州地域にも販路を見いだせる可能性がある。

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