「新幹線物流」に乗り出したJR東日本の本気度 JR九州や北海道も検討する「貨客混載」の将来性

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「もちろん宅配会社とも接触しているが、我々は宅配便の荷物を運ぶだけの業者になるつもりはない。新幹線物流を通して、事業創造、地域創生をやっていく」(内藤課長)

JR東日本のこうした動きに身構える会社がある。鉄道物流の本家、JR貨物だ。10月の会見で「旅客各社はライバルになるか」と問われた真貝康一社長は「社会交通インフラとして新幹線に磨きをかけるのであれば、物流でも活用していかなくてはいけない。旅客会社の取り組みを通じて事業性が確認できれば、旅客会社と協力して何らかの形で参画していきたい」と答えた。

浮上する貨物新幹線構想

国土交通省は、新青森と札幌を結ぶ北海道新幹線の高速化を目指し、在来線との共用走行の解消を図っている。現在、青函トンネルの前後82キロでは、新幹線と在来線貨物列車が同じレールを走っているが、両者の速度の違いからダイヤ設定に制約があるうえに、上下線ですれ違うとき、新幹線の風圧で貨物列車のコンテナが損傷する恐れがある。そのため、営業時速320キロで走行できる新幹線を、青函トンネル区間では時速160キロに落として走行している。

これではとても飛行機に対抗できないということで、浮上したのが貨物新幹線構想だ。 貨物は専用の新幹線列車で輸送して在来線を廃止し、減速問題を解消するアイデアだ。

高輪ゲートウェイ駅でのマルシェ(記者撮影)

やはりパレット式で、E5系車両をベースに全10両が貨物専用車両となる。積載重量は1編成で70トン。ただ、1編成44億円とされる製造費用、積み替え施設の整備などに600億~1800億円の費用がかるとされ、財源のメドは立っていない。東北新幹線(仙台ー東京間)の過密ダイヤを考えると、走行区間は札幌-盛岡あるいは札幌-仙台になるだろう。このような条件でも運びたいという荷主がどれだけいるか不明だ。

新幹線の速度向上が悲願のJR北海道は貨物新幹線構想に前向きだが、JR東日本には今のところ連携の動きはない。

鉄道政策に詳しいある与党議員は、「駅内でのオペレーションは旅客会社にノウハウがあるが、荷物が増えてきたとき、駅から先の集配をどうするのか。東京発の荷物需要の開拓なども貨物会社が得意としており、一緒にやることで事業の最大化が図れるのではないか」と話す。

JR各社で思惑が交錯する新幹線物流。荷主はもちろん、消費者にとってメリットが大きな事業に成長することが期待される。

森 創一郎 東洋経済 記者

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もり そういちろう / Soichiro Mori

1972年東京生まれ。学習院大学大学院人文科学研究科修了。出版社、雑誌社、フリー記者を経て2006年から北海道放送記者。2020年7月から東洋経済記者。

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