新国立競技場、本当にこれでいいのか! 有識者会議がJSCの基本設計案を了承

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5月28日の有識者会議の様子(撮影:梅谷秀司)

ただし、課題が山積している。有識者会議では「カネの問題もあるし、関係者から違和感があると言われている。計画をきちんと説明して理解を得るべき」(森喜朗元首相)などの意見が複数の委員から上がった。

これに対して、JSCは「(基本設計について)政府と調整したうえで、説明する機会を設ける」(河野一郎理事長)と回答した。

「70メートルに抑えたことでバランスが良くなったのではないか。(建築家などから)いろいろな問題が提起されているので、JSCはもっとしっかり発言をしていったほうがいいと思います」

ザハ案を採用したコンペの委員長を務めた建築家の安藤忠雄氏は、今回の案への支持を明確にすると同時に、反対の烽火を挙げている建築家を牽制した。

いずれにしろ、多くの委員がJSCの発信力の良さを問題視しており、国民に対してもっと積極的にアピールすることを求めた。

費用は膨らむ可能性

だが、説明不足という以外にも問題点はある。費用計算が厳密ではないことだ。総工費1625億円は2013年7月の単価による概算であって、消費税も5%時のものだ。言うまでもなく現在の消費税は8%になっている。昨今の建設現場での人手不足や資材の高騰などを考慮すると、実際の費用は概算を上回る可能性がある。なぜ現在の状況に合わせて計算をし直していないのか、疑問が残る。

そもそもJSCは大規模改修を検討していた時期がある。市民グループが情報公開で入手した内部資料によると、大規模改修は3年前に検討されていた。JSCが設計会社に詳細な耐震補強調査を依頼し、7万人収容規模への改修工事を4年の工期、総工費770億円で行えるとの試算結果がある。なぜ改築ではダメなのかについて、合理的な説明がなされていないままだ。来年10月の着工まで、まだ紆余曲折がありそうだ。

中島 順一郎 東洋経済 記者

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なかしま じゅんいちろう / Junichiro Nakashima

1981年鹿児島県生まれ。2005年、早稲田大学政治経済学部経済学科を卒業後、東洋経済新報社入社。ガラス・セメント、エレクトロニクス、放送などの業界を担当。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、ニュース編集部などを経て、2020年10月より『東洋経済オンライン』編集部に所属

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