舛添要一が危ぶむ「東京都民の避難ルート確保」 「東京防災」作った前都知事のやり残した仕事

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最近はどうかとスイス人に聞くと、ベルリンの壁が崩壊し、米ソ冷戦も終わったせいか、かつてのようにはこのハンドブックは注目されていないと言っていました。

しかし、この本には防災の観点から危機管理の参考になることがたくさん書いてあり、災害の多い日本でも役に立ちます。そこで、このスイスの例を参考にして、一家に一冊常備するために、完全東京仕様の防災ブック『東京防災』をつくろうと考え、都庁内にチームを発足させました。

チームの皆が頑張って、2015年9月1日の防災の日に間に合うように、これを完成させたのです。都内の全世帯に無料配布しました。この本には、避難経路の確認や家族の情報を書き込める「東京防災オリジナルMAP」も一緒に付けてあります。東京在住の外国人用に英語版も作成し、電子版では、中国語版、ハングル版も利用できるようにしました。

さらには、『東京防災』に依拠した教材、『防災ノート』を作成し、これを都内の全学校で活用しています。私も、港区の小学校の防災授業を視察しましたが、子どもたちは皆、高層マンションの住民であり、そのことを念頭に置いた防災授業が行われていることが印象的でした。

キーワードは「今やろう」

『東京防災』のキーワードは、「今やろう」です。それは、このハンドブックを参考にして、今すぐアクションを起こしてほしいという思いからです。たとえば、避難先の確認、防火防災訓練への参加、家具類の転倒防止、非常用持ち出し袋の用意、災害情報サービスへの登録、日常備蓄の開始などです。

日常備蓄については、災害時にライフラインが寸断されることへの備えをどうするかという課題です。

ライフラインの機能を95%回復させるのに、電力で7日、通信で14日、上下水道で30日、都市ガスで60日かかります。そのため、商品の流通に支障が出て、生活必需品が入手困難となります。そのような状況の下、自宅が無事だった人は、そのまま自宅にとどまって生活することが想定されます。そのため、食料品や生活必需品を自宅に備蓄しておく必要があるのです。

しかし、普段使わないものを集めるような、何か特別な準備となると、用意するのが大変であり、そのため備蓄があまり進まないのです。そこで、発想を切り替えて、「日常備蓄」、つまり、日頃から利用・活用している食料品・生活必需品を少し多めに購入することによって、準備をすることにします。

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