舛添要一が危ぶむ「東京都民の避難ルート確保」

「東京防災」作った前都知事のやり残した仕事

舛添要一氏が東京都の災害対策について振り返る(写真:まちゃー/PIXTA) 
東京都知事時代に『東京防災』を都内の全世帯に配布した舛添要一氏は、現在の東京都の災害対策をどのように見ているのか。『東京終了』より一部抜粋・再構成してお届けする。

私は若い頃、スイスでも勉強していましたが、この国はフランス、ドイツ、イタリアという強国に囲まれており、どうすれば国家の安全と平和を守ることができるかに腐心してきた歴史があります。

いずれの国とも同盟しない永世中立国となったのも、ヨーロッパの勢力均衡の中で生き残るための知恵なのです。そのスイスでは、さすがに危機管理体制が完備しています。

たとえば、高速道路はなるべく直線にし、中央分離帯を着脱可能なものとしてあります。それは、一朝有事のときに、滑走路として使うためであり、近隣の住民が中央分離帯を取り外し、両側の車線をフルに使った臨時滑走路をつくります。そして、高速道路のトンネルの中のシェルターに格納されている戦闘機が飛び立つ訓練をしていました。

これに対して、日本の高速道路はなるべくカーブを多くつくるようにしてあります。 それは、居眠り防止という交通安全上の配慮からです。しかし、そこには安全保障や防災という危機管理的な発想はまったくありません。

『東京防災』配布の経緯

私は、都知事になってから、東京でも、環七や環八といった広い幹線道路を滑走路として活用できないか検討してみましたが、ヘリポートにすらならない実態にがっかりしたものです。

また、スイスのパンは世界一まずいと言われています。それは、とりたての小麦は備蓄に回し、備蓄していた古い小麦を使ってパンをつくるからです。日本式に翻案すると、新米は備蓄して、古米を食べるといった感じなのです。これは、有事用の備蓄をいかに重要視しているかということを示したエピソードです。

スイスでは、その備蓄も含めて、戦争や災害に備えるためのマニュアルが、政府によって全世帯に配備されています。『民間防衛』という本ですが、これは邦訳も出ており、コンパクトながら、有事の際の行動規範から、日常生活での危険回避方法まで、具体的に細かく記されています。

スイスの家庭では、たとえば電話機のそばに、常備薬のように置いてあって、いつでも活用できるようになっていました。

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