家系ラーメン「町田商店」がコロナに動じない訳 5年後の「国内1000店舗計画」は一切変更せず

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外食業界では多店舗展開したがゆえに、集客力を落とし失敗に至るチェーンが後を絶たないが、田川社長は強気の姿勢を崩さない。これまで同様に家系を中心に出店しつつ、「家系以外のブランドの育成・展開」を図っていくとする。

たがわ・しょう/1982年生まれ。高校を卒業後、横浜家系ラーメン「壱六家」で6年間修業した後、25歳で独立。2008年に町田商店創業(提供:ギフト)

そこで、同社は2018年に「豚山」、2019年に醤油ラーメンの「長岡食堂」という新業態を出店した。住宅街やロードサイドなどを立地としてきた家系ブランドの店舗と異なり、「豚山」では人口の多い山手線内に出店し、「長岡食堂」では駅前を狙うなど、ブランド別に出店戦略を打ち出すことができるようになった。

家系では競合過多のため都心に出しづらいが、「豚山」や「長岡食堂」であれば都心や駅前でも出店余地があるという。出店エリアを分けることで、自社ブランド同士での競合を避けつつ積極出店ができる。

新ブランドを育成・展開するための2つ目の手段は買収だ。ギフトは2015年にコロワイドから訪日客をターゲットとしたラーメン「四天王」事業(大阪市内に2店舗)を、2019年には味噌ラーメンブランドを複数持つ「ラーメン天華」(栃木県を中心に9店舗)をM&Aによって取得している。今後も買収があるのかと尋ねると、含みのある答えが返ってきた。

田川社長
「具体的な話はまだない。ただし、すでにパイを抑えられていることから自社で参入するには障壁が高い、フードコート内の安価なラーメン業態などは検討したい」

「資本系ラーメン」との批判は意に介さず

ギフトでは、スープを店舗で仕込まずに工場から仕入れるセントラルキッチンを導入している。ラーメンファンの間では、そのようなスタイルを「資本系ラーメン」と揶揄する向きもある。しかし、田川社長は意に介さない。

「『資本系』との批判も承知しているが、多店舗展開するうえで大切なのは、味がぶれないこと。日によって、そして誰が作ったかによって、味が大きく左右されるようでは話にならない。個人店を否定するわけではなく、チェーンだからこそできることを引き続きやっていく。
町田にある本店では店内調理を行っているが、セントラルキッチンの店舗のほうが美味しいという声もある。最終的に選ぶのはお客さんだ」

居酒屋などと比べてコロナの影響が比較的小さかったラーメン業態は、大手外食企業などに攻め入られる立場でもある。それらの脅威を感じないのだろうか。

「ラーメン屋をチェーンで展開するハードルは意外と高い。ブランド育成に時間がかかるうえ、低価格競争に持ち込んでも、日高屋さんや幸楽苑さんがすでに市場を押さえてしまっている。
一方、脅威となりうるのはコンビニや食品メーカーが手がける冷凍食品やカップ麺。近年のレベルの高さには目を見張るものがあるし、何より値段が安い。とはいえ、『外食の楽しさ』に対するニーズは今後も絶対になくならないと考えている」

ギフトは2021年10月期も積極出店を行うべく、正社員200人、アルバイト2000人の計2200人を採用する計画だ。9月に行った東証1部への市場変更も、知名度向上と優秀な人材の確保が狙いの1つにある。アフターコロナを見据えた方針はどこまでも強気だ。

中尾 謙介 東洋経済 記者

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なかお・けんすけ

1998年大阪府生まれ。現在は「会社四季報」編集部に在籍しつつ水産業界を担当。辛い四季報校了を終えた後に食べる「すし」が世界で1番美味しい。好きなネタはウニとカワハギ。

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