2000年代に入ると、小田急側からの事業提携申し入れを機に、両グループの連携は急速に進む。背景には、1991年の年間2200万人をピークに箱根の観光客数が減少傾向にあったことがあり、小田急が箱根地区の持株会社である小田急箱根ホールディングスを設立するなど、事業再構築を進めた時期と重なる。
2004年4月に小田急箱根高速バスが西武系の施設である箱根園に乗り入れたのを皮切りに、小田急系の「箱根フリーパス」提示による西武系施設での割引実施、バス停名やバス路線系統のナンバリングの統一などが進められた。さらに近年では2015年の大涌谷噴火によるロープウェイ不通や、2019年の台風被害による箱根登山鉄道不通時の代替バス運行に、伊豆箱根バスが一役買ったのは記憶に新しい。
とはいえ、近年の箱根への投資状況を見ると、両者に隔たりがある。小田急は2000年代後半以降、2017年までの10年間で、日帰り温泉施設「箱根湯寮」オープン(2013年)、箱根登山鉄道「アレグラ号」導入(2014年)など、約200億円にのぼる大型投資を進めた。
さらに2018年8月には、新型海賊船の就航を目玉とする総額100億円の投資を発表するなど、2004年に有価証券報告書虚偽記載問題に起因して上場廃止(2014年に西武ホールディングスとして再上場)に追い込まれ、思うように投資を進められなかった西武に対し、投資規模で優位に立つ。
コロナ禍で迫られる戦略見直し
だが、コロナ禍の影響で、今は小田急も苦しい。小田急箱根ホールディングス営業統括部の担当者(以下、小田急箱根HD)は、「箱根フリーパスの売り上げが好調だった2018年と比べると、今年は6~7割減。GoToトラベルキャンペーンに東京発着が加わった10月になっても、急激な回復は見られない」といい、下記のように事業の方向性を見直す必要に迫られているという。
「例えば、箱根を訪れる観光客の自家用車率は、2017年時点で55%(箱根町観光協会)だったが、現在はコロナ感染予防の観点から、その比率がより増えている可能性が高く、現に大涌谷園地の駐車場では、入場待ちの長い車列ができることが多い。そこで、小田急グループの乗り物で箱根全体を周遊してもらうことを至上としていた今までの戦略を見直し、今後は、車でいらっしゃるお客様の重要性を再認識する必要がある」
具体的には、「ロープウェイの途中駅である姥子(うばこ)に車を駐め、大涌谷や早雲山まで1駅、2駅でもいいのでロープウェイをご利用いただいたり、ロープウェイで桃源台に移動し、海賊船だけ乗っていただくというような、お客様の細かいニーズも拾い上げ、訴求していく。また、今までは乗り物の運行情報だけを発信していた自社サイトで、道路の混雑情報や駐車場の満空情報も発信することなども検討している」という。
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