コロナの影響で小田急、西武ともに、当面、大型投資はしづらい状況にある。互いに苦しいこの時期を乗り越え、コロナ後を見据えるために、両グループがより連携を深め、少しでも多くの客を箱根に呼び込むような取り組みは検討されないのだろうか。
そこで考えられるのが、長年の課題であるフリーパスの統合問題だ。小田急系の箱根フリーパスは1999年6月から西武線沿線の各駅でも販売されているが、いざ箱根に来てみると西武系の乗り物では使うことができず、利用者目線で見ると不便さを感じる。2000年代には、両社共通のフリーパスが検討されたこともあったが、見送られた経緯がある。
この問題については、会社の総意ではなく現場から漏れ聞こえる声ではあるが、小田急側からは「箱根フリーパスが、伊豆箱根バスで使えないのは不便というお客様の声は今も多いが、統合が進まないのは過去の箱根山戦争は関係なく、商品設計やシステム上の問題ではないか」、西武側からは「(共通フリーパスが実現すれば)お客様にとっては利便性が非常に高まり、プリンスホテルが運営する箱根園などのグループ施設を訪れていただく機会創出になる」と前向きな考えも聞こえてくる。
デジタルサービスが1つの解に
そこで1つの解になりうるのが、デジタルサービスを使った連携だ。箱根の隣の観光地・伊豆では、東急主導でJR東日本、東急系の伊豆急行、西武系の伊豆箱根鉄道・バス、小田急系の東海バス等が連携し、デジタルパスを提示すれば各社の乗り物が乗り放題となるMaaS(マース)の実証実験が2019年4月から行われている。これまで計6カ月の実験期間中にデジタルパス類6166枚を売り上げるなど、企業グループを超えた連携事例として一定の成果を上げている。
こうしたデジタルサービス導入の実益としては、利用者の利便性向上や、データ取得・蓄積による利用者動向の把握といったことはもちろん、連携する事業者間の公平性の担保ということもある。複数企業グループがからむ企画乗車券を販売する場合、従来の紙のチケットでは料金設定や収益分配の公平性等が問題となったが、デジタルチケットであれば、実際の利用データを見つつ、分配額を調整するといったことも可能になる。つまり、連携の障壁が低くなりうるのだ。
狭い箱根の中で両陣営がしのぎを削ったのは、今は昔。コロナ後も、どこまで観光客が戻るのか情勢が不透明な中、安心・安全とともに一層の利便性向上も、今後、より激しくなるであろう観光地間の競争において生き残るための必要条件となろう。
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