トランプ"身内メディア"裏切りにぶち切れた夜 FOXが流したアリゾナ州の速報が流れを変えた
政権やトランプ氏の選挙スタッフと夜通し電話でやりとりしていたアリゾナ州のダグ・デューシー知事(共和党)は、州にはまだ集計されていない共和党票が残っている、とバイデン氏の勝利を認めようとしなかった。
トランプ氏の選挙対策顧問ジェイソン・ミラー氏は、FOXニュースの当確速報は信用できないとツイッターに書き込み、報道を撤回させようと気も狂わんばかりに動き回った。しかし、試みは失敗に終わる。FOXニュースの選挙結果判定チームは当確を取り消すどころか、同チームのヘッド、アーノン・ミシュキン氏を生放送に登場させて判定の正しさを主張、むしろバイデン氏勝利の判断を一段と強めてきた。
ルパート・マードックにまで連絡
その数時間後には、AP通信もアリゾナ州でバイデン氏が勝利を確実にしたと報じた(ニューヨーク・タイムズやCNNなどほかのメディアは、不在者投票の集計が済んでいないことから、4日午後になっても当確の判断を下さなかった)。
大統領の娘婿ジャレッド・クシュナー大統領上級顧問も夜更けにFOXニュースのオーナー、ルパート・マードック氏に連絡を取った。4日朝には、トランプ氏の選挙キャンペーンマネジャー、ビル・ステッピン氏がトランプ氏はアリゾナ州で3万票の差をつけて勝利する、と言い張った。
トランプ陣営が再選に一縷(いちる)の望みをつなぐには、アリゾナ州で勝利する可能性を何としても残しておかなくてはならなかったからだ。これはジョージア州やペンシルベニア州についても当てはまることだった。
トランプ氏は投票日当日の3日夜と翌4日未明のかなりの時間を、ホワイトハウスの居住棟でFOXニュースが伝える選挙結果を見て過ごしながら、そこから何人かの共和党知事に電話で連絡をとっていた。電話の内容を知る複数の消息筋によると、テキサス州のグレッグ・アボット知事、フロリダ州のロン・デサンティス知事との会話の中で、トランプ氏は選挙で不正が行われた可能性を尋ねていたという。
アリゾナ州のデューシー知事は、集計が完了するまでは誰も同州の勝者について判定を下すべきではない、と強い調子でツイートした。
バイデン氏がデラウェア州ウィルミントンで自らの勝利を予告する短いスピーチを行う様子がテレビ中継されると、トランプ氏と側近の間に怒りと動揺が広がった。バイデン氏は車から応援のクラクションを鳴らす支持者に向かって語りかけた。「私たちは、ここまでの結果にとてもいい感触を得ている。本当だ。私たちは勝利の軌道に乗ったと確信している」。