トランプ"身内メディア"裏切りにぶち切れた夜 FOXが流したアリゾナ州の速報が流れを変えた
フロリダ州が共和党の赤に染まるのを見て、トランプ大統領とその側近らは2016年大統領選挙日の夜と同じ光景を再び目にすることになると考えていた。このときは、フロリダでの勝利が全体の勝利を告げる前触れとなったからだ。
ホワイトハウスのイーストルームには楽観的な空気が流れ、閣僚、大使、元高官ら、トランプ氏の忠臣を含む大勢の人々がミニバーガーやフライドポテトをつまみながら談笑していた。トランプ氏の再選に悲観的だったスタッフらの頭にも「あと4年」のイメージがにわかに浮かび上がるようになっていた。
FOXの速報にブチ切れ
ところが、3日午後11時20分、トランプ氏寄りで知られるFOXニュースが、開票率73%の段階で早々とバイデン前副大統領がアリゾナ州での勝利を確実にしたと伝えると、トランプ陣営の勝利の「蜃気楼」にブスッと大きな穴が開いた。
トランプ陣営は、このニュースにブチ切れた。アリゾナ州で敗北したのが事実なら、トランプ氏がどれだけ選挙に勝ったと主張しようとも、疑いの目を向けられるのは間違いない。
FOXニュースの当確情報でトランプ氏の夜は一変。共和党の知事たちに次々と怒りの電話をかけ、対策を進言する側近のアドバイスをはねつけ、ついには民主的な手続きについて根拠のない暴言を連発した例の真夜中の大統領会見に突き進んでいく。4日午前2時30分、イーストルームに立ったトランプ氏は選挙を「いかさま」と決めつけ、票の集計停止を要求。問題をアメリカ連邦最高裁に持ち込むと語った。
トランプ陣営はアリゾナ州で勝利できるとみていた。しかし、バイデン氏の当確を伝えるFOXニュースの速報には象徴的な意味があった。2016年にトランプ氏の制した一連の州の一角が、初めて敵陣に切り崩される情勢となったことを示すものだったからである。