またそれまで堅実に成長していたアドゥリア氏よりも先輩格も同様にマスコミでも取り上げられるようになり、彼らのレストランは1年先まで予約で埋まるようになっていた。
そんな中、過去の栄冠を守り続けながら足踏みしていたのがサラカインだった。従来の客層だけでは店を維持していくのは容易ではなくなっていたため、2017年には4カ月をかけて店内を改装。そしてネクタイ着用という義務も廃止された。特に若い客層をいかに開拓するかが存続のカギを握っていた。
同様に、ミシュラン自体の評価基準も変化していった。電子紙『ディリヘンテス・ディヒタル』によると、サラカインがミシュランの最後に残っていた一つ星を失った翌年の2015年に当時店長だったペレス氏にインタビューした際、同氏は、「40年間高いレベルの料理をとどまることなく提供し続けてきたことを尊重するのではなく、現代好みの若者を対象にしたガイドブックのようになってしまった」と語ってミシュランガイドを批判した。
外国人観光客に支えられていた
それでも2018年には、サラカインの売上高は460万ユーロ(約7億8000万円)と前年比57%も増加したことが、スペイン通信社『エウロパ・プレス』(2019年2月12日付)でも報じられた。来客数も年間4万6400人、これも前年比64%と高い伸びを見せたという。
それは、1995年に顧客の1人だったルイス・ガルシア・セレセダ氏が買収してからもそれまでのスタイルを維持し、2017年には4カ月店を閉めて改装した成果でもあった。
また、スペインの多くの高級レストランがそうであるように、外人観光客への貢献も大いにある。2018年には、8000万人の観光客がスペインを訪問しているが、一般に三つ星レストランの7〜8割の客は外国からの訪問客で占めているとされている。スペイン人で三つ星レストランを利用できるお客は絶対数において少ない。
サラカインは、2018年にはすでにミシュランの星はなくなっているが、1980年代からスペインを代表するレストランの1つということでネームバリューは維持していたのである。
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