元祖ミシュラン三つ星店が閉店する切ない事情

スペイン料理を世界に知らしめた「サラカイン」

サラカインが成長していくさまは、1978年に民主化の道を歩み始めたスペインと重なる。同店はファン・カルロス前国王(当時国王)や、アドルフォ・スアレス初代首相など国内の政治家だけでなく、銀行家、世界の国家元首、著名スポーツ選手などが必ず訪れる店となっていた。1978年の憲法起草者らがその発布を祝うべく集まった場所でもあった。

また、スペイン王室への食事も必要とあらばこのレストランが用意した。2004年5月のフェリペ王子(フェリペ6世現国王)とレティシア王妃との結婚式での晩餐会の食事もこのレストランのシェフらが仕切って用意した。

ヴェルサーチにネクタイ着用を「要請」

サラカインが絶頂期の頃にジャンニ・ヴエルサーチ氏が訪問した時に彼にネクタイの着用を義務づけたという逸話が電子紙『アッパーズ』の11月6日付で紹介されている。ネクタイを着用しない場合は中に入れないことになっていると彼に伝えたという。

同紙によると、当時のサラカインでは、食事をするにはネクタイの着用が義務づけられていた。ヴェルサーチ氏には同店がこのような機会に備えて用意していたネクタイの中から選んでもらって食事をしてもらったという。そのネクタイはヴェルサーチのものではなかったが、同氏が着ていた仕立てのいいシャツにきれいにマッチしたと、13年間店長を務め、2018年に定年したカルメロ・ペレス氏は同紙に語っている。

さらに同紙は、ファン・カルロス前国王が訪問した時はいつも個室が用意され、時の有力家やソフィア王妃とも食事をする時もあったと書いている。前国王は特にパスタを食べるといつもご満悦だったそうだ。

同様に、サッカーのレアル・マドリードの関係者がよく利用しており、ヨーロッパチャンピオンリーグの対戦相手の会長らとの食事も頻繁に行われていたという。2017年のナポリとの試合の時は、ワインを彼らに勧めないように忠告されていたが、ナポリの代表らがワインを注文したのでそれを断るわけにも行かず用意。彼らは出したワインと生ハムが非常に気に入ったようで、その後の記者会見は酩酊してまともな回答ができなかった、というのをナポリチームのアシスタントがペレス氏に後から伝えたという。

だが、入れ替わりが激しい飲食業界で頂点を維持し続けるのは容易ではない。2000年代からライバルが多く登場するようになり、エル・ブジのフェラン・アドゥリア氏が世界的に著名になると、彼に続いて若いシェフもメディアに登場しスター的な存在になっていった。

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