スバル、新型「レヴォーグ」が背負った重大使命 不人気カテゴリーに最新技術をてんこ盛り

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理由の1つはスバルが重視する「安全」を表現しやすいということだ。同社は「走りを極めれば安全になる」というポリシーを掲げており、走行性能の高さが安全の確保に欠かせないと主張する。ステーションワゴンはミニバンやSUVに比べて車高が低い。競合との差別化を図るうえでも、ステーションワゴンという走行安定性が高い低重心のカテゴリーに力を入れている面はあるだろう。

新型レヴォーグに搭載する新開発の1.8L直噴ターボエンジン(写真:SUBARU)

さらに、スバル独自の水平対向エンジンを強く生かせるカテゴリーということも大きい。通常のエンジンはシリンダーと呼ばれる機構が原則として縦や斜め方向に配置されているが、水平対向はその名のとおり横方向にシリンダーが配置されている。エンジンの重心も低くなり、車高が低いステーションワゴンとの親和性は高い。

国内メーカーがステーションワゴンに力を入れなくなり競合車種が少なくなったことも追い風だ。人気は下火でも、一定の購入層がいるカテゴリーで最新技術を結集した車を打ち出すことで、スバルのような小規模メーカーでも独自性を強く打ち出すことができると判断したようだ。

ハイブリッドの設定はなし

今回の新型レヴォーグは、新開発の1.8L直噴ターボエンジンを採用した一方で、バッテリーを組み合わせたハイブリッドの設定はなかった。

スバルは2030年までに販売する車の40%を電動車とする目標も掲げている。その中で旗艦車種のレヴォーグにハイブリッドの設定がなかったことについて、中村社長は「車のキャラクター付けを考え、電動車の割合を判断していく。全部が全部ハイブリッド化するわけではない」と強調する。

スバルが最新技術を結集させた新型レヴォーグは国内販売の救世主となれるか。発売が本格化する年末から第4四半期(2021年1~3月期)にかけてのレヴォーグ販売動向が、スバルの国内販売の回復を見定める大きなポイントになりそうだ。

中野 大樹 東洋経済 記者

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なかの たいじゅ / Taiju Nakano

大阪府出身。早稲田大学法学部卒。副専攻として同大学でジャーナリズムを修了。学生時代リユース業界専門新聞の「リサイクル通信」・地域メディアの「高田馬場新聞」で、リユース業界や地域の居酒屋を取材。無人島研究会に所属していた。趣味は飲み歩きと読書、アウトドア、離島。コンビニ業界を担当。

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