豊臣秀吉の「自分アピール」が圧倒的だった訳 「相手がどう思うか」の配慮に長けていた天下人

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もろもろのことを踏まえて、「中国大返し&秀吉」からは、いったい何が学べるでしょう?

「超短期間で約230キロを駆け抜けたスピード」

もメチャクチャすごけりゃ、それを可能にした

「判断と対応のスピード」

も尋常じゃありません。

ただ、もひとつスゲー部分をあげるとするならば、

「秀吉の演出力&自己プロデュース力」

だと思います(例によって個人的意見ね)。

「伝説にコーティングされてる」なんて言い方をしましたが、自ら話を盛ったり、伝説を創りにいった節も大いにある秀吉さん。

もちろん、すべてのウソが通用してるわけじゃありません。

例えば、このあと秀吉は、「関白」(天皇をサポートする貴族のトップ)って職業に就任するんですが、そのタイミングで、

「うちの母ちゃんがさ、宮仕え(皇居の中で働くこと)したときに妊娠して、尾張に帰ってきて産んだのがオレ」

と言って、

〝あたかも自分が天皇の血を引いてる感〟

を出したときは、「いやウソつけ!」の総ツッコミが入ってます。「オレは関白にふさわしい!」ってのをアピールしたかったみたいですが、まず母ちゃんが宮仕えしてたってのがウソです。

でも、

ウソを使って自分に有利な状況を作り出したり、現代の僕たちに数々の伝説を信じ込ませる種をまいた秀吉のディレクションほど、ゾッとするものはありません。

天下を取ったあとも身分の低い人たちに気軽に話しかけて、まわりを感動させた! なんてエピソードもあるくらいです。この人が発する言動や振る舞いのすべては、〝相手がどう思うか〟というところをスタート地点にしていたんじゃないでしょうか。

人たらしは本来「人をだます」という意味

よく、〝人たらし〟(みんなから愛される的な意味)という言葉で表現される秀吉ですが、本来〝人たらし〟は「人をだます」という意味。

『13歳のきみと、戦国時代の「戦」の話をしよう。』(幻冬舎)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら

なんだか真逆の意味を含んだ単語になってますが、ウソをつくにも、人を喜ばすにも、とにかく相手の心を読み取ろうとしたって部分で、あらためて秀吉を表すのにピッタリの言葉なんじゃないかなと思ってます。

相手がどんな状況で、何を思い、何を考え、何を求めているのかを読むというのは、昔も今もホントに大事な作業。

ここをおろそかにすれば、どんなコミュニケーションも、どんなアイデアも、まったく意味をなしません。が、徹底的に相手の立場に立った考え方を追求すれば、自ずと最良の答えにたどりつく。というのも、昔から変わらないのかもしれませんね。

ただ、秀吉のマネはやめたほうがいいです。ウソつくとシンプルに嫌われっから(というわけで個人的見解でございました)。

房野 史典[ブロードキャスト!!] お笑い芸人
ぼうの ふみのり / Fuminori Bouno

1980年岡山県生まれ。お笑いコンビ・ブロードキャスト‼のツッコミ担当。無類の戦国武将好き。歴史芸人ユニット「六文ジャー」を結成し、歴史活動も盛ん。

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