イギリス「再ロックダウン」の大きすぎる影響 11月5日から約1カ月間、前回とは何が違うのか

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このスキームの利用者はイギリス全体では現在約200万人。これが今回のイングランド地方の再ロックダウンで550万人に増加し、スキームへの拠出額は545億ポンド(約7.4兆円)に上るという試算が出ている。これはイギリスの国防費に相当するほどの巨額だ。

イギリス監査局の推計によると、政府のコロナ対策に拠出した総額は8月時点で2100億ポンド(約28.5兆円)に上ったという。政府の公的部門の予算の約4分の1に相当する。

暗いクリスマスになる可能性

最初の全国的なロックダウンはいつ解除するかを決めない形で始まったが、今回は「11月5日から12月2日まで」という期限付きだ。どれほどの効果があるのか。

インディペンデント紙も指摘していたが、科学者らがロックダウンの実施を提案したのは9月だった。そこで、「何カ月も前から警告してきたのに、今となっては数字を劇的に抑えるには遅すぎる」という見方がある。また、「たった1つの政策に頼るには無理がある」という声も。

どの科学者も「PCR検査の増大や、陽性となった人とその周囲に注意を喚起する『追跡アプリ』の拡充、ワクチン開発の迅速化」といった、複数の施策を同時に行うことで一定の結果が期待できるという。しかし、陽性者に接触した人を見つけ、検査を受けてもらい、必要であれば隔離させるための追跡アプリが迷走状態となっている。

ジョンソン首相は「世界に誇る追跡アプリ」を開発したと豪語したものの、まず陽性となった人が接触した人々への連絡率が低い。首尾よく連絡が付き、今度はその人が検査を受けたとしよう。その結果の判明に数日かかる場合が多い。この間にほかの人に感染しまうこともあるわけだ。

ワクチンは年内あるいは来年の春までには利用できるはずだが、広く行き渡るまでには相当の時間がかかると言われている。

イギリスでは、クリスマスと言えばたくさん買い物をし、食べて飲み、家族と一緒に過ごす非常に重要な時だ。しかし、本当に12月2日までに再ロックダウンが解除されるかどうかも不透明な中、クリスマス当日、同居していない自分の肉親と会えるかどうかもわからなくなってきた。今年のクリスマスは、イギリスに住む人にとって暗いものになりそうだ。

小林 恭子 在英ジャーナリスト

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こばやし・ぎんこ / Ginko Kobayashi

成城大学文芸学部芸術学科(映画専攻)を卒業後、アメリカの投資銀行ファースト・ボストン(現クレディ・スイス)勤務を経て、読売新聞の英字日刊紙デイリー・ヨミウリ紙(現ジャパン・ニューズ紙)の記者となる。2002年、渡英。英国のメディアをジャーナリズムの観点からウォッチングするブログ「英国メディア・ウオッチ」を運営しながら、業界紙、雑誌などにメディア記事を執筆。著書に『英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱』。

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