こういったコミュニティの声を拾っていくのは、手間暇がかかります。そのため、このプロセスを無視して、いきなり中央政府と交渉して土地利用権を取得する人たちもいます。しかし、いきなり現地にいって開墾すると、地元住民との軋轢が生じます。アフリカのある国では開墾者が殺されてしまった、という恐ろしい話も聞きます。こういった、企業にとっても、コミュニティにとっても不幸な出来事を避けるために、「ちゃんと住民コミュニティを巻き込んでプロジェクトを進めましょう」と企業側にお話していくのも、開発関係者としての僕の大切な役割のひとつです。
こういった苦労を経て、土地が取得されるのです。
アフリカの農業、すなわち運送業?
土地を取得したあとは、開墾が始まります。右下の写真にあるような、サバンナの林を整備し、見事な耕作可能地が出来上がるわけです。木を切り倒すのも大変ですが、もっとドラマなのが、アリ塚の切り崩し(写真左下の、土が盛り上がった部分)。アリが土を唾液で固めるため、土が周りよりも固く、大変な作業だそうです。
コンゴ南部では、トラクターや灌漑設備などは地元で作っておらず、すべて国外からの輸入になります。コンゴ南部は内陸なので、これらの輸送が大問題!
南半球の種まきの時期は10月。この種まきに間に合わせるように、畑を耕すトラクターを夏の間にコンゴに到着させようとすると、前の年の9月には欧州のメーカーに発注しなければなりません。メーカーでの製造に数カ月、欧州から南アフリカへの海上輸送に1カ月、南アフリカでの港の通関に数週間。
南アフリカからコンゴまでの内陸輸送は、ジンバブエ、ザンビア、コンゴと3つの国境を越える3000キロ近い輸送なので、さらに数カ月要します。
万が一、機器の到着が遅れ、種まきが間に合わないと、丸1年無駄にすることになりかねません。だから、この運送には必死です。起業家いわく、「ウチの商売の本質は、農業じゃない、運送業だ!」
また、作物の種子や肥料も、同じように、すべて輸入。これらが輸送費込みの高い値段になってしまうので、農場の運営費用も高くつきます。
こうして、諸々の設備投資、運営費用を積み上げていくと、コンゴで農業をやるのは、アフリカの中でも先進的な南アフリカや、先進国で農業をやるのと比べ、何割増しものコストがかかってしまうのです。
こうして育てた割高なトウモコロシは、近隣の市場で売りさばかねばなりませんが、果たして売れるのかどうか。実態調査をすべく、早速、青空市場に行き、トウモロコシ粉を売っているおばちゃん何人かに話を聞きました。
「ウチで売っているトウモコロシ粉は、南アフリカや近隣のザンビアという国からの輸入だよ。おたくの商品も、輸入品よりも安ければ、もちろん喜んで仕入れるよ」
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