ニッポン野球界への「怒り」と「希望」 日本の野球に未来はあるのか?

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5月20日に報じられた「セ・リーグが交流戦半減を提案」という報道には、怒りを覚え、落胆した。そもそも交流戦が始められたのは、2004年の球界再編問題が発端になっている。リーグ消滅まで危惧されたパ・リーグを救うため、それまで反対してきたセ・リーグが手を差し伸べた格好だ。新しい取り組みを野球ファンは支持し、「夢の対戦」に心を踊らせた(交流戦の変遷や背景はリンクの記事が興味深い)。

ファンの意思に反し、半減を求める提案には耳を疑うばかりだ。しかも上記の産經新聞の報道には、「日程縮め11月に侍ジャパン戦狙う」と書かれている。日程を縮めなくとも、13年には11月に台湾遠征を敢行したではないか。交流戦改革と侍ジャパンはまったく別物であり、記事が出た背景に恣意的な意図を感じざるをえない。

交流戦、プロ野球は誰のためか。言うまでもなく、ファンを楽しませ、ワクワクさせるためだ。サービス業に従事する者にとって、お客様の顔を見ながら商品を提供するのは、原理原則だ。東日本大震災が勃発した年、セ・リーグは予定どおりに3月25日の開幕にこだわり、選手やファンの大反対を買って変更した“前科”もあるが、「誰のためのプロ野球か」という点を再確認してほしい。

おじいちゃんになって長生きを

プロ野球界は日本社会の縮図――。

楽天の三木谷浩史が言った表現をヒントに、今回の企画は編集長の佐々木紀彦、元全国紙野球記者の新田哲史とともに肉付けされていった。侍ジャパンやNPB、アマチュア球界の協力を得て、筆者なりに日本野球の過去、現在を直視し、未来に思いを馳せた。

嫌になるような現実、しがらみも感じたが、それ以上に野球の醍醐味を再確認できたのが正直なところだ。なかなかタフな連載だったが、期間中に行った他媒体の取材で、栄北高校の球児たちが甲子園に懸ける思い、埼玉西武ライオンズの岸孝之が誇る一流投手の理論、筆者と同い年の阿部慎之助(読売ジャイアンツ)がどんな思いでプレーしているのかなどを聞き、野球のすばらしさが胸にしみ渡った。

“おやじスポーツ”の野球には、周囲から尊敬されるような“おじいちゃん”になって長生きしてほしい。現在も多くの日本人にとって、野球は特別なスポーツなのだから。

はたして、野球界は変われるのか。侍ジャパンという希望があれば、抵抗勢力たちもまだまだいる。しかし、本当の意味でのイノベーションが起きなければ、明るい未来はない。

(=敬称略)

※ 第4回の連載で「東京六大学は60周年を記念し、2010年から毎年、関東で巨人OB、関西では阪神OBを招き、大学生がプロから技術指導を受けられる特別講座を主催している」と書きましたが、正しくは「全日本大学野球連盟は2010年から毎年、関東で巨人OB、後に関西では阪神OBを招き、大学生がプロから技術指導を受けられる特別講座を主催している」でした。訂正します。

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