三菱ケミHD、「外国人社長」起用に浮かぶ危機感 ベルギー出身・ギルソン新社長が担う課題

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社長の越智氏は完全に会社を去る一方、会長の小林喜光氏について橋本氏は、「求心力を維持するため、取締役として残ってもらうようにお願いした」と説明した。グループ内で強い影響力を持つ小林氏の留任には、大胆な改革の副作用をある程度抑える目的もあると見られる。

三菱ケミHDのある経営幹部は今回の人事について、「今後の事業リストラありきというわけではない」と前置きしつつ、「デジタルトランスフォーメーションや環境問題への対応、健康関連事業の拡大が今後の重要ポイントになる。大幅に事業を組み替えるしかないが、日本人には無理だ。最適な人材を探した結果、ギルソン氏になった」と解説する。

構造改革を成功に導けるのか

そのうえでこの経営幹部は「菅義偉首相も2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにすると(所信表明演説で)言っているし、欧州もグリーンリカバリーを掲げている。これまでのようなやり方ではダメだ」と強調する。

三菱ケミHDのこれからの変革は、現在進行形の脱・汎用石化に加え、地球環境への配慮と収益性の両立を目指すものになるとみられる。それに見合う事業の拡大を図るほか、既存事業のやり方を改めたりすることもありうる。

例えば、石油からつくっている製品を植物性由来に替えることで、事業環境の変化に適応するような形だ。その転換コストとの見合いも含めて、この方向性に合わないと判断された事業、収益性の向上を見込めない事業は、新体制下で売却対象となる可能性がある。

2021年2月には2022年度までの経営計画が発表される予定で、そこには2025年度までの経営方針も盛り込まれる可能性がある。社長就任直前のギルソン氏の意向が濃く反映されるはずだが、どんな財務目標を掲げるのか。そして、目標実現の具体策は何か。早速、外国人新社長の手腕が試されることになる。

奥田 貫 東洋経済 記者

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おくだ とおる / Toru Okuda

神奈川県横浜市出身。横浜緑ヶ丘高校、早稲田大学法学部卒業後、朝日新聞社に入り経済部で民間企業や省庁などの取材を担当。2018年1月に東洋経済新報社に入社。

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