報告書がイマイチな人はメモのコツを知らない 表現力ではなく「素材」をどう見つけるかだ

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人間は忘れる生き物。その文章を誰に読ませたいかを考えて、素材となるメモを残しておこう(写真:metamorworks/PIXTA)

文章を書く仕事でフリーランスになって26年になるが、私の社会人のキャリアのスタートは、アパレルメーカーの営業職だった。当時は文章を書くことが苦手で、まさか将来、自分が書くことで生きていくことになるとは、まったく想像もしていなかった。

営業経験はわずか1年半だったが、静岡や山梨のショップを担当し、お店巡りをしていた。出張が多く、会社に出るのは金曜だけという週もあり、ここで求められたのが、営業日報だった。これに苦戦した。何を書いていいのか、わからなかったのである。

「営業の仕事は好きだが、帰社してから営業日報を書くのが苦痛だ」という声はよく耳にする。今はリモートワークの拡大で、上司が目の前にいる機会が減り、自宅でどんな仕事をしたのか、毎日のように日報にして報告しなければならなくなった人も増えたはずだ。

上司にすれば、部下がどんなふうに仕事をしているのかが見えない。だから、これまで外回りの営業は日報が求められてきたわけだが、これが他の職種にも広がってきているのである。

文章を書くにもメモは重要な役割を果たす

私自身がなぜ、営業日報が苦手だったか。書く仕事をするようになって振り返ってみると、その理由がよくわかる。営業中、何をしていたのかについて、まったくメモを取っていなかったからだ。それなのに会社に戻ってから、日報を書こうとしていた。これでは、書けないはずである。拙著『メモ活』でも詳しく解説しているが、文章を書くにもメモは重要な役割を果たすのである。

営業日報の場合も、営業を終えて会社に戻り、「今日は何をしていたんだっけかな?」と振り返っても、そうそう思い出せない。「わずか数時間前のことなのに……」という経験は、多くの人にあるのではないか。

忘れてはいけないのは、「そもそも人間は忘れる生き物」だということだ。メモを取っていないと忘れてしまう。だから、「書くことがない」という事態に陥る。営業日報でも業務日報でも、必要なことは、その都度メモを取っておくことなのだ。

「朝から1日、どんなことをしていたか」

「お客さまとどんな会話を交わしたか」

「どんなふうに仕事を進めたのか」

「どんな成果物があり、どんな課題をつかんだか」

「次にどんなアクションを起こすか」

営業でもリモートワークでも、朝からこういうことをちゃんとメモしておく。面倒に思えるかもしれないが、これをやっていないと、いざ日報を書く段階になって、困るのだ。頭をひねって思い出さねばならなくなるからである。

次ページ「日報は誰が読むのか」に着目してみよう
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