映画「鬼滅」の熱狂に見たアニメの新しい稼ぎ方 アニメ化企画の発起人が裏側を語り尽くした

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――アニメの人気が出てからは、コンビニやアパレルショップなど、街のいたるところで鬼滅のキャラクターグッズを目にします。マルチメディア展開に力を入れている印象です。

コンテンツを作る側というより、タイアップする企業や、消費者の価値観がここ数年で大きく変わったのだと思います。10年前に、コンビニの棚にアニメ絵のグッズが並んでいる様子などとても想像できませんでした。

私が子どもだった30年前なら、学校の1クラス40人の中で、「アニメが好き」と公言するのは1割の4人くらいだったように思います。少なくともマジョリティーではなかったし、声高に言える趣味でもなかった。それが今や、クラスに3~4割、もしかしたらもっと、アニメ好きがいるかもしれません。アニメは、エンターテインメントの1ジャンルとしてしっかり育ちました。

――鬼滅のアニメは、原作コミック7巻の序盤で終わっています。その続編をテレビ放送ではなく映画で描いたのはなぜでしょうか。

「無限列車編」の一連のストーリーを描くのに、映画というフォーマットが最適だと考えたからです。

アニメは、主人公たちが列車に乗り込むところで終了しました。そして、映画のストーリーは列車から降りるところで終わります。13回で1シリーズが通例のアニメ放送では、シリーズの途中で一連の話が終わってしまいますが、映画であれば2時間弱で一気に見てもらうことができます。アニメ放送の中盤頃、非常にたくさんの方にアニメを見ていただけていることを感じ、続編を映画化することに決めました。

アニメを表現方法にしたときの強み

――抽象的な質問をします。ある物語を原作にコンテンツを作ろうとしたとき、実写、ゲーム、ノベライズ、漫画化などさまざまな表現手段がある中で、アニメの強みとはなんでしょう。

クリエイティブの自由度と、波及効果の高さはアニメならではの強みです。

10月16日公開の劇場版。アニメのファンは、小さい子どもから中高年まで幅広い(©吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable)

まず、どんなシチュエーションでも映像として表現することができます。たとえば実写で宇宙を描くのはなかなか大変ですが、アニメであれば可能。太陽系をまたぐ壮大なストーリーを表現することだってできます。それも、違和感なく。

さらに配信サービスの普及によって、国籍、人種、文化を超えてたくさんの人が見てくださる映像表現になりました。それこそ、ハリウッド映画を楽しむのと同じような感覚で、鬼滅も海外の方からたくさんリアクションがあります。どこか特定の国で人気が出るというより、どこの国でも見てくれている。それがアニメの面白い点です。

印南 志帆 東洋経済 記者

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いんなみ しほ / Shiho Innami

早稲田大学大学院卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界の担当記者、東洋経済オンライン編集部、電機、ゲーム業界担当記者などを経て、現在は『週刊東洋経済』や東洋経済オンラインの編集を担当。過去に手がけた特集に「会社とジェンダー」「ソニー 掛け算の経営」「EV産業革命」などがある。保育・介護業界の担当記者。大学時代に日本古代史を研究していたことから歴史は大好物。1児の親。

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