エンジン開発で結束、国内メーカーの危機感 乗用車メーカー8社が研究の共同組織を発足
エンジンという自動車メーカーにとっての中核分野で、国内乗用車メーカーが足並みを揃えて共同開発に踏み切った。
トヨタ自動車や日産自動車、ホンダなど国内乗用車メーカー8社と、経済産業省系の財団法人日本自動車研究所は、自動車エンジン(内燃機関)の基礎研究を行う共同組織「自動車用内燃機関技術研究組合(AICE=アイス)」を発足させた。また、経済産業省が所管する独立行政法人の産業技術総合研究所もこの組織に参加する予定だ。
世界的に規制が強化されているエンジンの低燃費対策や排ガス対策で、物理的なメカニズムの解析やシミュレーション技術など基盤的な分野でテーマを設定、大学などの学術機関に研究を委託する形で共同研究を進める。研究開発の結果は各メーカーに還元し、具体的な製品への展開は各メーカーが独自に行う。初年度の2014年度は、参加団体が5億円を拠出、経産省の補助金5億円と合わせて10億円の事業費を用意した。
今回、わずか年間10億円の規模とはいえ、全社が共同開発に集結した背景には、エンジン開発で欧州メーカーに遅れをとり、新興国メーカーにも急速に追い上げられているという危機感がある。
ディーゼル開発に照準
その象徴といえるのが、共同研究のテーマの第一に掲げられたディーゼルエンジンの排ガス処理の研究開発だ。排ガスの処理性能を高めたディーゼルエンジン、いわゆるクリーンディーゼルエンジンは、ガソリンエンジンに比べて二酸化炭素の排出量が低く、欧州や新興国を中心に、次世代エコカー用のエンジンとして存在感を高めている。
もともとガソリンエンジンを主体とする日系メーカー各社は、トップメーカーを中心にエコカー技術としてハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)など電動化に開発をシフトした結果、ディーゼル技術では完全に欧州勢に水を開けられた。
大津啓司・AICE理事長(本田技術研究所常務)は、「欧州メーカーは、開発の競争領域と協調領域をうまく峻別し、効率的な開発体制を構築している。新興国メーカーもその仕組を学び、開発力を上げている」と説明する。現在、マツダのディーゼルエンジンなど一部を除き、国内勢には競争力のある乗用車用ディーゼルエンジンの技術はなく、キャッチアップのために手を組んだわけだ。
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