「実母の暴挙」に苦しんだ48歳女性が見た死の淵 2度の離婚、子育て、介護のストレスでうつ病に

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「ようやく父は私のことを理解してくれました。このときから、身内に味方がいるという心強さや安心感が芽生え、母の介護を前向きに行うことができるようになりました。これがなかったら、たぶん今、私はこの世にいなかったと思います」

母親の死

母親は2017年12月末、特養に入所し、その後病院から療養型施設に移り、昨年の2019年1月31日に誤嚥性肺炎で亡くなった。81歳だった。

「母が亡くなったときは、悲しみもありましたが、正直ちょっとほっとしました。子育てをしながらの介護は相当つらかったので、『早くこの状況から抜け出したい』と、つねに思っていました。母は、私が介護している最中も、じっと私を見て、私にダメ出しを始めます。2度の離婚や子育てについてなど、とにかく毎日必ず文句を言い説教をするのです。体力的な介護よりも、精神的に母に振り回され、逃げ場がない状況が、死にたいと思うほどつらかったです」

一時はたばこや酒にもおぼれた。

「母とは何度も言い争いをしましたが、自分が不利になると『死んでやる!』と死をほのめかし、私が折れるのを待つのです。正直、『早く死んでくれないか』と思ったことは、数え切れません」

母親は晩年、言葉が話せなくなると、田中さんに対して手を合わせて「ありがとう」とも「ごめんなさい」ともつかないようなジェスチャーをすることがたびたびあったという。

現在88歳の父親との関係は良好だ。

ただ、20年前から糖尿病と心筋梗塞で通院しているほか、15年前に前立腺がんを患い、手術や治療を受け、経過を見ている。ここ数年で認知面が著しく低下してきており、今は要介護1だ。

長男は大学生、次男は高校生になり、近居している祖父の様子を見に行くなど、田中さんをサポートしてくれる。母親が祖母を介護している様子を生まれたときから見てきたためか、心の優しい青年に成長した。

田中さんは、38歳のときに介護福祉士の資格を取得。43歳で相談支援専門員の資格を取り、障害者を支援する相談室を運営。現在は友人が経営する会社で、保育事業開発、社員教育、雇用の仕事をしながら、相談支援専門員としても働いている。

「私にとって介護は、大変なことばかりでやりがいや喜びはありませんでした。ただ、介護を経験して、私の経験が誰かの役に立てば……という思いと、介護保険内サービスの不足や介護家族を支える専門家の必要性を感じていて、何かできないかと考えているところです」

介護家族を支える専門家やサービスは、十分とはいえない。

子育ては子どもの成長とともに楽になっていくが、介護は終わりが見えず、田中さんのように介護うつになるケースも珍しくない。介護家族を支える専門家やサービス、介護職員や特養の不足など、介護にまつわる問題も山積している。

内閣府によると、総人口に占める65歳以上人口の割合(高齢化率)は27.7%。これが2065年には38.4%になると推計されている。

一方、要支援・要介護認定者は、2016年で約618万人。65歳以上の5〜6人に1人が要支援・要介護認定者だ。

これから増加する要支援・要介護認定者をどうするのか。保育同様、このまま介護を家族に任せきりにしていいのだろうか。抜本的な政策が望まれる。

旦木 瑞穂 ライター・グラフィックデザイナー

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たんぎ みずほ / Mizuho Tangi

愛知県出身。印刷会社や広告代理店でグラフィックデザイナー、アートディレクターなどを務め、2015年に独立。グルメ・イベント記事や、葬儀・お墓・介護など終活に関する記事の執筆のほか、パンフレットやガイドブックなどの企画編集、グラフィックデザイン、イラスト制作などを行う。主な執筆媒体は、産経新聞出版『終活読本ソナエ』、鎌倉新書『月刊「仏事」』、高齢者住宅新聞社『エルダリープレス』、インプレス「シニアガイド」など。

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