日本の「攻撃力強化」を米国が心底望まない訳

イージス・アショア停止でどう自国を守るのか

「実際、アメリカが日本の代わりに北朝鮮を反撃し、朝鮮半島で戦争を引き起こすようなリスクを冒すことはないだろう。もちろん、全面的な攻撃があった場合は別だが」と、日本研究に関する第一人者であり、当選すればジョー・バイデン政権に加わる可能性が高い、元オバマ政権の防衛当局者のショフ氏はみる。

アメリカの防衛専門家は、ほかのアメリカの同盟国と同様に、日本が直接攻撃能力を持つことにある程度の価値は認める。しかし、彼らはこうした能力は既存のアメリカの防衛軍と統合されるべきであり、より緊密な共同指揮下に置かれるべきだと主張する。

「日本の攻撃能力をアメリカ軍に統合して『同盟国の能力』とすることができれば、アメリカはそれを力の乗数と見なし、いいことだと判断する」とショフ氏は語る。「たとえ日本が同盟に半信半疑でも、アメリカの助けなしに日本が単独で直接攻撃をすることは無理だろう」。

防衛能力を高めるのはいいが…

アメリカの専門家は、信頼できる直接攻撃能力を持つためのコストは、イージスのような限定的なミサイル防衛システムをはるかに超えて莫大になると指摘する。衛星監視システムのようなインテリジェンス、および偵察システムの複雑なインフラなしには、北朝鮮のミサイル発射台を見つけて標的にし、ミサイル攻撃することはできない。

北朝鮮の防衛システムも攻撃するには、サイバー、宇宙、電磁気兵器も必要になるだろう。海外の専門家らは、アメリカがすでに持っている能力と同等のものを手に入れるために、限られた資源を浪費することが理にかなっているのかどうか疑問に思っている。

国防総省は、紛争が発生した場合、日本がアメリカ軍をより積極的に支援できるようになることを長い間求めてきた。当局者と緊密に連絡を取っている専門家によると、国防総省内部では日本が軍備強化することによって、「前のめり」になることを期待している。彼らは、少なくとも理論的には、日本の積極参加を可能にした2015年の安全保障関連法成立を歓迎している。

「だが、日本が他国を攻撃できる能力を持つという話になると、大いに支持するという話にはならないだろう」と、防衛政策の主要シンクタンクであるランド研究所のジェフリー・ホルヌング氏は話す。

「アメリカの拡大抑止に頼れないと仮定しない限り、アメリカとは関係なく、日本が独自に対外攻撃能力を整備するという議論はあり得ない。しかし、これは理論上の話で、現実的に見て、この地域で紛争が発生した場合、アメリカが日本へのコミットメントを果たさないことは想像できない」

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