核のごみ処分場、寿都町長が語った応募の真意 精密調査入りなら住民投票に踏み切る可能性も

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10月9日、原子力発電環境整備機構の近藤駿介理事長(右)に書類を手渡す、北海道寿都町の片岡春雄町長(左、記者撮影)
原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物、いわゆる「核のごみ」の最終処分場をめぐる議論が動き出した。
北海道寿都町は10月9日、最終処分場の選定に向けた文献調査の応募書類を原子力発電環境整備機構(NUMO)に提出し、同日、神恵内村も調査受け入れを正式に表明した。
寿都町は人口2900人余、神恵内村は同800人余。ともに北海道電力・泊原子力発電所に近い、北海道西部に位置する小さな自治体だ。両町村は風評被害などさまざまなリスクをとって、なぜ調査にあえて応募したのか。寿都町の片岡春雄町長にインタビューした。

一番手でチャレンジしたかった

――文献調査に応募した後、どのような反響がありましたか。

町外の反対派から「やめろ」というハガキが自宅にもたくさんきて、妻は睡眠不足になるなど精神的には大変だった。(応募前日の10月8日には)自宅に放火もされた。

役場にはがんがん電話が来るし、職員も大変だ。それでも、議会には核のごみの受け入れに賛成か反対かではなく、私の考えに賛成か反対かと訴えてきた。すべての責任は私にある。

――改めて応募に至った考えを教えてください。なぜ調査受け入れを表明したのですか。

一昨年の胆振東部地震で被害のすさまじさを見せつけられた。寿都町の足もとは大丈夫なのか。できればボーリング調査で地盤を確認したいねと、議会と話をしていた。

昨年、北海道経済産業局のエネルギー関連の勉強会で、核のごみのことも話題になり、最終処分場に向けた調査のことも耳にした。ただ、手続きに入るのは刺激が大きすぎるし、厳しいと思っていた。

ところが今年に入り、コロナ禍が猛威を振るった。一寸先は闇だ。寿都町は周辺自治体と比べて面積が小さく、道路延長も少ない。地方交付税は隣町(の黒松内町)と比べて3億円も少ない。町営の風力発電やふるさと納税の収益でよそに負けない行政サービスをやっているが、今後は売電価格の下落などもあり、場合によっては歳入は大きく落ち込む。これからどんな手を打つべきか、2月ごろから議会と議論してきた。

その後、6月にNUMOから講師を招いて、議会や産業団体などと勉強会を開いた。文献調査から概要調査へ、さらに精密調査へ進んでも、途中で(調査を)止められると聞いて、これなら安心して応募できると思った。国民全体に議論の輪を広げる意味でも、一番手でチャレンジしたいと議会に説明した。

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