核のごみ処分場、寿都町長が語った応募の真意 精密調査入りなら住民投票に踏み切る可能性も

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――神恵内村の高橋昌幸村長は、「核燃サイクルを完結させるのは重要な課題」と住民報告会で話しています。国の原子力政策をどう考えていますか。

核燃サイクルとか、そんな大それたことより、核のごみは処理しなければならないという一点で考えている。(核のごみの処理は)どこかでやらなければならないという日本人としての責任。お互いに押しつけあっているのは恥ずかしいことだ。

かたおか・はるお/1949年生まれ。北海道旭川市出身。1971年専修大学商学部卒業。民間会社を経て1975年に寿都町役場に入庁。2001年町長に就任し、現在5期目(寿都町提供)

――実際に最終処分場を誘致する意志はあるのですか。

文献調査から概要調査、精密調査(が終わる)まで20年あり、その中で考えること。進まないならそれでいいと国も言っている。それが信用できないと心配する人も多いが、そこは協力しなければ、どこも手を上げるところが出てこない。

いずれにせよ、前に進むかどうかは住民に判断してもらうのが鉄則。文献調査についても住民投票すべきだという人もいるが、ここは私の肌感覚(で賛成多数)と言わせてもらっている。概要調査を受け入れてボーリング調査を行い、地盤の状態を確認することは有効だと思うが、そこから先の精密調査に進む際には、住民投票が必要だと思う。

20億円の一部は洋上風力発電の誘致に

――文献調査に応じると、2年で20億円が交付されますが、以前から取り組んでいる洋上風力発電の誘致に活用するのでしょうか。

洋上風力発電は、われわれの海を勝手に使わせないという民間の方もいるので、それなら官主導でやろうと周辺7町村の協議会で話をしてきた。ただ、官主導といっても資金がない。国の予算をつけてくれないかと話をしているが、なかなかうまくいかない。

こうした資金の一部に(文献調査の)交付金を活用する考え方もある。議会と相談しながらだが、洋上風力発電の誘致に向けた風況調査も1つの使い方だろう。

――2021年11月には町長選挙があります。6期目となりますが、出馬を考えていますか。

ここまでやって、俺は知らんという話はしにくい。女房や(町内に住む)家族には申しわけない思いだが、責任の重さはひしひしと感じている。

寿都の町民は、思想はいろいろあってもそれを乗り越えて、いい付き合いをしている。申しわけないことに、みんな今回のことで溝をつくらないように努力してくれている。(文献調査までの)決断が長引くほど賛成、反対で溝は深まっていく。

速く(文献調査応募という)入学手続きをして、落ち着いて議論すべきだと考えた。せっかくの寿都の人の良さが、感情的になると、とんでもないことになってくる。いま以上に緊張感をもってやっていく。

森 創一郎 東洋経済 記者

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もり そういちろう / Soichiro Mori

1972年東京生まれ。学習院大学大学院人文科学研究科修了。出版社、雑誌社、フリー記者を経て2006年から北海道放送記者。2020年7月から東洋経済記者。

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