受精卵だけ「渡航」で男女産み分け 生殖資本主義と欲望の果て

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清水さんはこう指摘する。

「渡航して戻ってきた胚を移植することを日本の医師が手伝う形でサービスが成立しているとすれば、国内のガイドラインから外れる違反行為になるのでは」

清水さんは、企業名は伏せたが、日本側の協力医療機関を公言しないよう、同意書を求めるケースがあったと依頼者から聞いたという。

「ビジネスとの結びつきの中で、水面下で利益を得ている人がいるとしたら。グレーなマーケットになりうる存在」

新たな検証が必要

CGLに問い合わせると、日本側に提携している医療機関はなく、もともと依頼者が不妊治療を受けていた医療機関が窓口になるとの説明だった。ただし、該当する窓口が見つからない依頼者に対しては、医療機関選びの相談にも乗るとのこと。また、基本的には依頼者自身と医療機関との信頼関係で理解を得た上で受精卵の凍結、あるいは戻ってきた凍結卵の移植を行っているため、それに協力した医師の口止めを依頼するようなことは「一切行っていない」とする。

日本産科婦人科学会倫理委員会委員長を務める苛原(いらはら)稔・徳島大学教授(産婦人科学)は懸念する。

「もし、産科婦人科学会員である医師が関わっているとすれば大きな問題。今後情報を集めていきます」

人が飛行機で海外に渡ってそうしたサービスを受けること自体にもさまざまな問題点が指摘されているが、もはや人ではなく受精卵が単独で渡航する時代。となると、新たな検証が必要になる。

(ライター:古川雅子、写真部:堀内慶太郎)

※AERA 2014年5月26日号

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