太田光「M-1審査員の依頼があっても断るワケ」 「漫才が天職」とは自分では一切思っていない

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たとえば、立川談志師匠。俺は間近で師匠を見ていて痛感したけど、あの人は最後まで自分の才能と向き合っていた。過去の大名人と自分を比較したり、もっと言えば古典落語そのものと格闘していた。師匠の心の内には、古典落語に勝ちたいとの願いがあったのだと思う。

だとするなら、江戸時代から明治、昭和、そして現在へと受け継がれてきた芸には到底勝てるもんじゃなくて「俺は負けた」と時には落ち込んだこともたくさんあったはずでね。あれだけの天才がそこまで悩んでいたんだから、若いやつごときが才能について悩むなんて当たり前の話で、それが入り口だし、そこからしか始められない。

「漫才が天職」とは思っていない

かくいう俺自身、迷ってばっかりだ。たまに「漫才が天職ですね」などと言われることもあるけど、自分ではそんなことを一切思っていないから。自分としては、子供の頃に憧れた歌ありコントありの番組でネタをやってみたいと願っているし、小説も書きたい。

なかなか実現できないけど、長編映画も撮ってみたい。しかも、売れたい。でも、どうすれば売れるかなんてわからない。だからいろんなことに手を出しては失敗しているんだけど、それでも「なにかあるんじゃないか?」と探し続けている状態だから。

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40歳の頃の桑田佳祐さんは、「他者との比較ではなく自分のなかで一番信じられる才能は?」との問いに「17歳の頃の感性をいまだに信じられるところ」と答えたという。

桑田さんの言葉ほどかっこよくはないけど、ふつうの大人ならいい加減自分の向き不向きとかいろいろ見えてくるはずなのに、いまだにずっとわかっていないところが俺の才能なのだろうか。いや、それも最初の田中の才能の話と同様に詭弁だと思う。

そういえば、ピコ太郎のブレイクを予見していたあの上田は俺に会うと「あんたが売れた理由がまったくわかんない」とよく口にする。その通りだと思う。そもそも、売れる・売れないがどの段階を指すのかも難しいし、やっぱり、才能や売れるというテーマは俺にはよくわからない。

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