太田光「M-1審査員の依頼があっても断るワケ」 「漫才が天職」とは自分では一切思っていない

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他事務所で若手芸人の場合は、わざわざネタ見せに来てくれて、うちの作家や『タモリ倶楽部』などの放送作家である高橋洋二さんが「おもしろい!」と感じたら出演してもらうんだけど、ある時、ブレイク前の小島よしおがネタ見せに来てくれたことがあった。そのネタ見せでの小島くんは合格しなかったんだけど、次の月には大ブレイクしていたから。

この事実は、審査した作家の見る目がないとかの問題じゃなくて、それぐらいお笑い芸人の売れる・売れないなんて誰にもわかりゃしない。

そのオーディションに関して昔から俺が言っているのは、「芸人に対してダメ出しだけはしないでくれ」ということ。その理由は、爆笑問題が若手時代にテレビ局のネタ見せに行って的外れなダメ出しをするやつらにムカついたからというのもあるけど、一番大きいのは、誰がいつ売れるかだなんてわからないと切実に思うからだ。

「嫌なことをがんばる」才能はない

笑いの世界の正解なんて、俺には本当にわからない。だからもし、『M-1』の審査員の依頼があったとしても断ると思う。でもね、その理由は笑いの正解がわからないということからだけじゃなくて、せっかくのあの大会の緊迫感をぶち壊してしまう予感があるからだ。

審査よりも先に、とにかく自分がウケたくなっちゃうっていうね(笑)。「いまこの場で0点とか出したらどうなっちゃうんだろ?」「いやいや、さすがに『M-1』でそのボケはダメだろ」という葛藤はあるだろうけど、やっぱり0点を出してしまう気がする。いや、絶対に出す。俺にはその誘惑に勝てる自信が一切ない。

そんなわけで、才能に関しては「わからない」というのが本音だけど、その言葉と対になる「努力」もまた、微妙な言葉だ。俺は、お笑いの仕事はもちろん、小説などの文章を書くことやそれにまつわる調べ物、ある時期までしていたメモを残す行為を努力だと思ったことが一度もない。

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