ギリシャが財政破綻を回避する道はあるのか--ケネス・ロゴフ ハーバード大学教授
EU(欧州連合)とIMF(国際通貨基金)は、ギリシャ救済のために巨額の支援を行う条件を整えた。しかし、ギリシャが債務不履行を回避できるかどうかをめぐり議論が沸騰している。
一部の論者は、ギリシャ政府の財政危機と、2001年に起こったアルゼンチン政府による世界最大の財政破綻(ドル基準)との類似性を強調している。一方、ギリシャのパパンドレウ首相などは、財政問題は困難ではあるが対処可能であると主張し、海外の投機家の行動に不満を漏らしている。
債務不履行を回避することは可能かもしれないが、簡単ではない。それは、国民所得の170%に達している対外債務やGDP(国内総生産)の13%を占める財政赤字などの経済統計を見れば一目瞭然である。
しかし、問題は数字だけにあるのではない。ギリシャに対する信頼性にあるのだ。何十年にわたって統計を整備してこなかったため、誰もギリシャ政府の発表する統計を信頼していない。
また、過去の債務不履行の歴史を見れば、ギリシャを信頼できるはずがない。ギリシャは19世紀に独立を勝ち取って以降、ほぼ2年置きに債務不履行を繰り返している。過去の例を見ると、ギリシャでは財政赤字が続いた後、ある日突然、債務不履行が行われている。
そうした事態は、どこの国でも起こりうる。ただ先進国では財政赤字が累積すると、調整の痛みを和らげるために迅速で信頼性のある財政緊縮政策がとられるのが通例だ。しかし残念ながら、発展途上国では、外部からの支援がないと調整が不可能な場合が多い。それが、ギリシャが窮地に陥っている理由だ。
もちろん、債務危機は不可避なわけではない。だが、そのためにギリシャ政府は、増税だけでなく、07年から09年に急増した歳出(GDPの45%から52%へ増加)の削減にも取り組む必要がある。