一方の徳島市は、1988年に神戸淡路鳴門道の開通により、阪神地区と高速道路で直結した。現在、JR徳島駅からは、平日ベースで神戸に片道17便、大阪に27便の高速バスが出発している。阿南方面から徳島市内で停車して大阪に向かうバスも合わせると、毎日50便以上の高速バスが、徳島から阪神方面へ向かっていることになる。
高速道路ができる前は、徳島から大阪へは和歌山港までフェリー、和歌山港からは南海電車で難波へ向かうルートがメインであった。これでは何度も乗り換えがあるし、所要時間も長い。気軽に買い物へ行けるルートではなかった。
これが高速バスでは、徳島駅から神戸三宮まで110分、往復で6000円あまり。三宮周辺には、「大丸」と「阪急」のほか、港に面してショッピングモールが入る「ハーバーランド」もあり、周辺のショッピング街も合わせれば十分買い物を楽しめるし、大阪便を使えば、西日本最大の商業集積を誇る大阪のキタにもミナミにも直行できる。
2018年4月6日の徳島新聞に「検証明石架橋20年 消費流出 徳島市内の店舗激減」という記事が掲載され、このように書かれていた。
「本州への人の流れが加速する様子は、高速バスの利用状況からも見て取れる。開通直後の1999年に淡路島を経由して四国と京阪神を結ぶ高速バスは1日92往復だったが、16年には3倍超の314往復に拡大。輸送人員も2.5倍近くに膨らんだ。松茂町の徳島とくとくターミナルでは、徳島駅よりも周辺の駐車料金が割安とあって、近隣の農業用地は次々と駐車場に姿を変え、現在の収容台数は町が把握するだけでも861台に上る」
徳島市民が、高速バスのターミナル周辺に車を停めて鳴門・明石の両海峡を越えて行き来していることを、地元でも大きな課題だと認識していることが伝わる記事である。
百貨店の苦戦は構造的な課題だが
山形の大沼も徳島のそごうも、閉店の理由は高速道路による買い物客の流出だけが原因ではない。
百貨店は、郊外の大型ショッピングモールや家電・ファッションの専門店の隆盛、ネット通販の普及、人口の減少などで構造的な不況が続いており、高速道路の影響はほとんどないと考えられる地区の百貨店の撤退も続いている。今年になってからも、すでに「そごう西神店」「西武岡崎店」「中合福島店」「髙島屋港南台店」などが営業を終了した。
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