「なぜかいい決断ができる人」がしていること 感情を押し殺さないで、うまく利用するには
期待
これを選ぶと考えると、ほかの選択肢よりもわくわくしてエネルギーがわいてくる――。そんなふうに感じたら、その選択肢は重視すべきサインかもしれません。といっても、その期待が本当に取るべき選択を意味するのかはしっかり確かめることです。
認知心理学者のダニエル・カーネマンは、決断の記録を取ることを勧めています。何かの選択を迫られたら、その選択によって何が起きると思うか、そのシナリオに心ひかれるのはなぜかを書いておきます。そうすると、自分の期待が正しかったか評価できますし、この先何かを決めるときに自分の感情をどう扱えばいいかのフィードバックにもなります。
不安をうまく利用するには
不安
実は、不安は悪いものではありません。どの選択肢もいいときほど、人は不安になるようです。心理学ではこれをウィンウィンのパラドックスと呼んだりします(神経科学では「第一世界問題に相関する神経活動」、すなわち先進国特有のぜいたくな悩みとも)。あなたが抱えているストレスを軽んじるわけではありません。難しい選択はやはり難しい選択ですが、プラスの側面もあるのです。
不安をうまく利用するには、不安がどこからきているかを理解する必要があります。「不安というのはさらなる恐怖への恐怖心です。身のまわりの世界を自分の管理下におき、現実を把握して安心したいという要求が根っこにあります」と、エグゼクティブ・コーチのジャスティン・ミラノはいいます。不安と恐怖心を区別するポイントのひとつが、恐怖心は一時的なもの、不安は数日か場合によっては数カ月続くことです。
まず、手に入れたい、掌握したいものは何かを明確にするところから始めます。ミラノは次のような問いかけを勧めています。「思い入れを抱いているのはどんな期待、考え、結果でしょうか? あの投資家からの支援?特定のクライアント? 特定のプロダクトでしょうか?」。思い入れの対象が何か明確になれば、不安を生産的に利用できるわけです。
「健全なやりかたは、まずこういう結果を手に入れたいという自分の思いを認識したら、その思い入れをいったんゆるめて、創造力を発揮して現実に即した新たな道を描くことです」とミラノ。モリーの経験を例に挙げてみましょう。
モリーは以前、クライアントに満足してもらえるか不安に思っていましたが、不安の根本には役に立ちたいという思いがあると気づきました。そこでいまは、クライアントに初めから「お役に立てるためにできることはありますか?」と問いかけることにしています。
いま感じている不安が何を意味しているのか、不安を生産的なものに転じるにはどうすればいいのか。この答えを見つけるために、ミラノは5つの問いを立てました。
1. 何が不安なのか。
2. その不安を身体のどこで感じるか。
3. そこに反映されている願望は何か。不安の裏にある願望は何か。
4. 願望に気づいたら、それに従って行動を起こすかどうか。
5. 行動するなら、どんな段階を踏んでクリエイティブなアクションを起こしていくか。
これに順番に答えていくと、恐怖心から反射的に動くのでなく、問題解決のために創造性をもって動けるようになるはずです。