日本がデジタル化で遅れる決定的な構造要因 国家・産業・企業における競争戦略を考える
以下の図はスガノミクスの全体像を示すものです。私の専門である国家・産業・企業の競争戦略を分析する際のフレームワークにならい、菅首相の公約を「グランドデザイン」「理念」「ビジョン」「戦略」とブレイクダウンする形で整理しました。なお、菅首相の理念として知られる「自助・共助・公助」のフレーズですが、正しくは「そして絆」と結ばれます。
(外部配信先では図を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)
ここでは紙面の制約から、日本創生戦略×デジタル戦略の掛け算による、「デジタル副業・複業市場の創造」を提言します。
日本創生は、地方創生、産業創生、企業創生、個性創生と4つの領域で行われます。また、それぞれを実行するプロセスとして次の「3つのC+D」を提言します。
つなげる(connect):中央・地方・産業・企業・1人ひとりの個性をつなげる
深める(cultivate):それぞれの創生での絆を深める
デジタルで進化させる(DX):デジタルトランスフォーメーションで「自助・共助・公助、そして絆」を進化させる
スイスが小国なのに国際競争力が高い理由
これを背景に、4領域では次のような変革が期待できるでしょう。
さきほど小国のDXの事例に触れましたが、地方創生においても、ある小国が参考になります。スイスです。
スイスは小国でありながら国際競争力ランキングの上位です。その要因は煎じ詰めると「優秀な人材や企業を国外からひきよせている」からです。なぜそんなことが可能なのかといえば、事業環境×教育環境×生活環境が三位一体で優れているためです。地方創生=産業とイメージされがちですが、事業環境だけでは人は集まりません。例えば、優秀なAIエンジニアは働く環境があっても、生活環境や教育環境が優れていなければ家族を連れていけず、わざわざ国外から移住しようとは思わないでしょう。
それでは日本の地方はどうか。これまで地方は、豊かな自然など生活環境はもともと優れている部分があったものの、教育環境や事業環境が整っておらず人や企業をひきよせることができていませんでした。しかしコロナ禍によって急速に事業環境・教育環境のDXやオンライン化が進み、ようやく事業環境×教育環境×生活環境の三位一体が整いつつあります。後述のデジタル副業・複業市場を創造すれば、さらにカバーできるでしょう。
すでに報じられている地銀再編のみならず、あらゆる既存産業の再編が進みます。いい例は自動車産業です。自動車にIT、電機、通信、電力・エネルギー、金融等の産業がクロスオーバーする次世代自動車産業が誕生しています。また自動車は「再編すべき」産業でもありました。2020年7月、EVの雄であるテスラの時価総額がトヨタ自動車の時価総額を超えただけでなく、のちに日本の全自動車メーカー上場9社の合計時価総額を超えたことが大きなニュースとなりました。
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