日本がデジタル化で遅れる決定的な構造要因 国家・産業・企業における競争戦略を考える
というのも、CDTOに求められる資質は非常に高度です。実務と先進のテクノロジーの両方に精通していなければ務まりません。さらには、GAFAやBATHといったメガテック企業が高い報酬と働きやすい職場環境を用意して獲得しようとしている優秀なエンジニアをひきつけ、採用し、定着させなければならないのです。デジタル庁の成功は、優秀なエンジニアをひきつけ、自律的に働くことを促進し、スタートアップ企業のような組織文化に刷新し、イノベーションを生み出せるかどうかにかかっている。私はそう確信しています。
「マイナンバー」で浮き彫りになる自治体システムの課題
デジタル庁の課題として想定される「マイナンバー」についても、解決しなければならない課題があります。
新政権はすでに「マイナンバーと口座を連動させることで、給付金の手続きをスムーズにする」等の方針をまとめています。国民の使い勝手や使いやすさ(ユーザビリティー)を考えるなら、行政サービスを受ける際の基盤としてデジタルIDを付与するのは必然であり、またそこにマイナンバーを活用することについては異論ありません。
もっとも、ユーザビリティーの追求は一筋縄ではいかないことには触れておきたいと思います。デジタルツールである以上、PCやスマホと同様、ユーザーフレンドリーが厳しく問われます。私たちがすっかり慣れ親しんでいる「サクサク動くスマホ」と同等のユーザビリティーがなければ、どれだけ高機能であっても使われないことでしょう。ここでは詳述しませんが、中国企業がテクノロジー先進国となったのも、徹底したユーザビリティーの追求に複数のプレイヤーがしのぎを削った結果です。地方自治体が、自らの業務の効率性・生産性向上ばかりに気を取られ、国民の利便性向上を怠るようだと、マイナンバー改革は失敗します。
さらに大きな課題が3つあります。
第1の課題は、マイナンバーを取り扱う都道府県・市町村・省庁のシステムがバラバラであることです。
これまで都道府県・市町村・省庁のシステムは、これまで各自がバラバラにITゼネコン各社に発注してきました。そのためマイナンバーで公的サービスをそろえていくことになった場合に
② それぞれのものをつなぎ合わせる
どちらか一方の選択を迫られることに。
②の場合、みずほフィナンシャルグループのシステム統合のように多大な時間を要し、また後述するようにセキュリティー上の懸念が増大するため、①が望ましいといえます。韓国も「バラバラだった自治体のシステムを統合した」過去がありますが、その際は韓国地域情報開発院(KLID)が自治体向けに共通のソフトウェアを開発し、無償配布しました。
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