郷原信郎「検察は神ではなく人は間違いを犯す」 日本人が人質司法にあまり違和感を持たない訳

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法務省は、カルロス・ゴーン被告による日本の刑事司法批判に対し、反論のQ&AをHPに掲載。取り調べに弁護人の立ち会いを認めていない理由について、次のように記している。

「弁護人が立ち会うことを認めた場合、被疑者から十分な供述が得られなくなることで、事案の真相が解明されなくなるなど、取調べの機能を大幅に減退させるおそれが大きく(中略)真相解明を望む国民の理解を得られない」

現在進行中の「刷新会議」でも、弁護人の同席を求める意見に対し、検察や警察出身の委員から「捜査に支障が出る」などの反対意見が出ている。

罪を犯した者は正直にしゃべるべき?

――取り調べに弁護人が同席すると、捜査に大きな支障が出るという意見については、どう考えていますか。いったい、どんな支障が出るというのでしょうか。

「日本では、罪を犯した者は正直にしゃべるべきだという考え方がデフォルトなんです。検察官、警察は、被疑者の権利を守るという発想ではなく、こいつが犯人だと思えば、なんとしてでも自白させようと考えます。弁護人が立ち会えば、取り調べは慎重になるでしょうが、検察や警察がやろうとしている取り調べとはまったく違うわけです」

「今は録音・録画が進んでいるので、以前とはかなり違う。昔ならプレッシャーをかけて自白させるのが当たり前でしたが、今はなかなかできなくなっているはずです。それだけでも昔とは大きく違うのだから、一歩進んで、自白は簡単にとれないことを前提にし、弁護人を立ち会わせるというのも、検察の考え方次第ではありうると思います。実行してみたら、捜査上の問題はないという結論になる可能性もある。諸外国では、弁護人が立ち会ったら犯罪が野放しになっているのかというと、そうではないのですから」

――ゴーン被告の海外逃亡後、当時の森法相は会見で「あらゆる機会を捉えてわが国の刑事司法制度について誤解がないように、正確なご理解をいただけるように発信していきたい」と述べています日本の司法制度は誤解されているのでしょうか。

「説明すればわかるはず、向こうの勘違いという一方的な発信ではなく、お互いに理解し合わないといけない。そして、その前に、日本の刑事司法のどこが特異なのか、その根本的な考え方が諸外国とどう違うのか、自分たちでも改めて見つめ直す必要があると思います」

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