さらに5・6号車のグリーン席の座席は800系新幹線の座席をベースとしたものだ。「800系の座席の完成度が高い」(JR九州)ため、新たに座席をデザインせず、800系タイプの座席を使うことになった。当初は廃車となった新幹線車両の座席を再活用するという構想もあったが(「観光列車の座席に?『廃車新幹線』意外な使い道」)、「新品でいこうということになった」(同)。
36ぷらす3というユニークな名前は、九州が世界で36番目に大きい島ということに由来する。「ぷらす3」とは、JR九州によれば「驚き、感動、幸せ」または「お客様、地域のみなさま、私たち」を表すという。ちなみに「“ぷらす”はひらがなにしたらどうかとK会長(唐池恒二会長)から提案があった」と、青柳社長が秘話を明かしてくれた。
スタッフ訓練は車両完成前から
36ぷらす3は5日間かけて九州を周遊し、総走行距離は1198kmに及ぶ。5日間のルートは次の通り。木曜日は博多→鹿児島中央に向かう。金曜日は鹿児島中央→宮崎、土曜日は宮崎空港・宮崎→大分・別府、日曜日は大分・別府→小倉・博多、月曜日は博多と長崎を往復するというものだ。
責任者を務める鉄道事業本部営業部営業課の堀篤史担当課長は、「1日単位で乗車できるので、お客様にあった旅のスタイルを見つけていただければ」と話す。運行開始は10月16日金曜日。つまり初出発の地は鹿児島中央駅だ。
観光列車の魅力は車両だけでない。食事、さらに車内スタッフによる乗客のおもてなしも不可欠の要素だ。これがないと、どんなに豪華な車両も一瞬で色あせる。観光列車戦略で一日の長があるJR九州はその点をよくわかっている。36ぷらす3が完成してから客室乗務員の訓練をするのでは間に合わないと判断し、36ぷらす3のベースとなった787系を使って、実際のダイヤに合わせて乗務員の訓練運行を行った。
8月9日、大分駅に姿を見せた787系の試運転列車にJR九州の従業員約40人が乗り込んだ。博多や鹿児島の拠点から集められたよりすぐりの人材だ。
【2020年9月30日8時23分追記】初出時、JR九州従業員の記述に誤りがありましたので、上記のように修正しました。
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