キリン・サントリー「強者連合」決裂の余波
キリンにしてみれば、出資比率3分の1を超える筆頭株主は、経営に関与してくる存在になりかねない。対してサントリーは、創業家という安定株主がいて非上場を貫いたからこそ、自由な経営ができたとの考えがしみ付いていた。
消耗戦に逆戻り
破談になったことで、海外戦略の見直しは必至。両社とも、引き続き国内外でM&Aを続ける意向は強い。ただ、キリンは過去3年間買収を重ね、つぎ込んだ資金は6000億円強。昨年も豪ビール会社ライオンネイサンを子会社化しており、2009年12月期の有利子負債額は前期比35・2%も膨らんだ。
一方、サントリーは昨年、仏飲料大手オレンジーナを買収。中期的に「4000~5000億円の(資金)余力はある」(財務担当者)とするが、単独で生き残るには新たな資金調達手段も必要になる。
だが、そのうえでもテコ入れが必要なのは国内事業だ。M&Aで海外に打って出るにも、「国内事業をキャッシュカウに育てることが最低条件」(ゴールドマン・サックス証券の田中克典アナリスト)だからだ。
足元、キリンにとって最大の利益源であるビール類市場は5年連続で縮小。にもかかわらず、発泡酒や第3のビールなど商品が増え続けており、拡販費は膨張傾向にある。
サントリーの稼ぎ頭である飲料市場はさらに過酷だ。ビールと違い参入企業が多く、商品数も膨大。2009年は不況のあおりでお茶などの清涼飲料離れが加速しており、身を削った値下げ合戦が恒常化している。