居酒屋・金の蔵が、あの「チカラめし」に頼る事情 苦境打開へ昼と夜の“二毛作"営業を開始

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現場レベルの低下による店舗ごとの味やサービスのばらつきなどがあだとなり、ブームは一気に終焉。当初は駅前一等地を中心に店舗を出していたため賃料負担も重かった。膨らむ赤字に耐え切れず、2014年には直営の約8割にあたる68店舗をカラオケボックスや飲食店運営などを展開するマックグループ(現Airside)などに売却した。

ピーク時には直営とフランチャイズ(FC)を合わせて130を超えた店舗数も、今では直営で都内に3店舗、千葉に1店舗、FCで大阪府内に2店舗を展開するにとどまり、街ではほとんど見かけなくなった。

認知度の高さを生かす

短期間で天国と地獄を見たチカラめし。三光フーズは今回、このブランドをコロナ禍での新たな武器として目をつけた。「ネームバリューはある。認知度の高さをうまく生かせないか」(三光フーズの山形幸司事業企画部長)。

そもそもチカラめしは、居酒屋の調理機械を使って調理していた。今回、ランチ強化のために間借り営業を始めても、あらたに設備投資を行う必要がほとんどない。また、昼限定店舗のメインメニューの数は「焼き牛丼」など5種類のみ。通常のチカラめしの店舗では20種類ほどあるが、品数を絞り込むことでオペレーション面での煩雑さをクリアした。

金の蔵内で提供された焼き牛丼。金の蔵にもともとある調理機械で作ることができるため、ランチ営業開始に伴う初期投資はほとんどかからない(記者撮影)

三光フーズは二毛作店舗の出足に手ごたえを感じているようだ。「渋谷東口店などではSNSの口コミもあって活況だ」と山形事業企画部長。当面は6店舗の展開で状況を見るが、「最終的には金の蔵全19店にまで導入することを視野に入れている」(同)という。

チカラめしのブランド力を活用しランチ需要の開拓を図る三光フーズだが、経営は深刻な状況だ。主力の総合居酒屋が稼げなくなり、2017年6月期以降は4年連続の最終赤字が続く。

2020年6月期は売上高73億円(前期比30.9%減)、40店舗超の閉店に伴う減損などを計上したことにより最終赤字27億円(前期実績15億円の赤字)に陥った。現在、決算書には「継続企業の前提に関する重要事象等」の記載がついている。

年間1000社以上の企業をリサーチしている、分析広報研究所の小島一郎アナリストは「新業態を作ろうとしたチャレンジ精神は評価できるが、チカラめしの運営を継続する力がなかった。約10%もの営業利益率をたたき出す外食業界屈指の優良企業だったものの、チカラめしの転落で明確に潮目が変わり、今では大赤字を垂れ流している」と話す。

資金繰り面にも不安が残るため、2020年6月期には新宿や新橋の不動産売却により売却益8億円を計上し、同期末の現預金は16.3億円と平均月商の2.7倍を確保した。これまで無借金経営を続けてきたが、コロナの長期化を見据え、現預金に厚みを持たせるべくすでにいくつかの金融機関から融資を受ける話を進めているという。

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