「父親の遺骨を継母に奪われた」55歳男性の後悔 納骨後に勃発する厳しい「遺骨の所有権争い」

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「父が再婚したとき、素直に祝うことができず、継母との関係もよくないまま月日が流れてしまった。その結果がこれなのか。母には申し訳ない気持ちでいっぱいです……」

こうしたケースの場合、遺言で啓介さんが祭祀承継者として指定されているなど特別な理由がない限り、遺骨を受け取るのは難しい。継母と分骨について承諾してもらうことを根気強く交渉していくほかない。

「遺骨問題」はトラブルが表面化しにくい

4組に1組が夫婦とも再婚またはどちらか一方が再婚、という現代社会において、家族関係はひと昔前と比べると複雑になっている。

信仰による考え方の違いや国籍の多様化などもあり、どのお墓に入ったらいいのか、そのお墓を守っていくのは誰になるのか、といった問題はそれぞれ事情が異なり一筋縄ではいかない。さらに当人同士だけで解決できる問題でもなく、親戚が絡んで一層複雑になってしまうケースもある。

そうなると、「お墓は面倒」「お墓は不要」という意見が目立つようになり、海洋散骨がクローズアップされたりもするが、年間死亡者数約130万人のうち、海洋散骨される人はわずか1%ほど。話題に上るほど普及しているとは言いがたく、ほとんどの人はどこかに遺骨を納めることを考えないといけない。

お墓や仏壇など、「祭祀」の類を継ぐ人を祭祀承継者といい、これらについては「遺言で指定」「慣習に従う」「家庭裁判所で決める」と民法で定められている。遺骨の所有権については法的に明確に記されていないが、一般的には祭祀承継者に帰属するものとされている。

財産の相続は争いの火種になりがちだが、遺骨はその性質上分けることを前提としていないだけにトラブルや争いが表面化しにくい。遺骨を火葬場で2つに分けて、以降それぞれの家は互いに顔を合わせることなく、法要や納骨は別に行ったというケースもある。

遺言で祭祀承継者を決めておきたいと思っても、指定できるのは原則一人だけ。しかも「分骨して欲しい」「散骨して欲しい」など、遺骨の行先について詳細に記しても、これらは法的に効力が認められる事項ではなく、その意思が反映されるとは限らない。だからといって全く無意味なわけではなく、遺された人が故人の思いを知る手がかりとなることには違いない。遺言の付言事項やエンディングノートなどに記しておくことで、トラブルが発生したとき、解決の糸口をつかんだり突破口を開くきっかけとなることもあるので、こういったツールを活用するのもひとつの方法だと思う。

吉川 美津子 社会福祉士

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きっかわ みつこ / Mitsuko Kikkawa

葬儀・お墓・終活ビジネスコンサルタント。(一社)供養コンシェルジュ協会理事、(一社)葬送儀礼マナー普及協会理事。駿台トラベル&ホテル専門学校、上智社会福祉専門学校非常勤講師。大手葬祭業者、仏壇・墓石販売業者勤務を経て独立。コンサルティング業務のほか、葬送・終活関連の人材育成に携わっている。また福祉職として、介護・福祉と葬送・供養をつなぐ活動を行っている。『葬儀業界の動向とカラクリがよ~くわかる本』『お墓の大問題』『死後離婚』等著書多数。「吉川美津子のくらサポラジオ」(レインボータウンFM)毎週日曜日放送中。

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