「父親の遺骨を継母に奪われた」55歳男性の後悔 納骨後に勃発する厳しい「遺骨の所有権争い」
さすがに驚いてはいたが、これまでの互いの関係性が悪くなかったことが幸いした。和夫さんは「奈津江さんは坂田家に縛られる必要はない。晩年、父の側で介護や看病をしていたのは奈津江さんであり、父は自分たち子どもよりもいちばん信頼していた思う」と分骨を快く承諾してくれた。また、「親戚に言うと面倒なことになるから」と、分骨をする日は和夫さんだけが立ち合った。
「寺院に分骨にする理由を話したり、遺骨を取り出すための石材店の手配など、すべて和夫さんがやってくれた。感謝しかない」と彼女は語る。奈津江さんは無事、夫の遺骨を手にすることができた。
その後、奈津江さんは夫婦で入ることができる都内の納骨堂を購入し、そこに分骨した夫の遺骨を納めた。実娘には納骨堂を契約したことを伝え、将来ここに納骨してもらうことで彼女のお墓問題は無事解決した。
継母に遺骨を奪われてしまった55歳男性
奈津江さんの場合は運がよかったが、一方で家族の遺骨を取り戻せないケースもある。次に紹介するのは「再婚相手である継母に、実父の遺骨を取られてしまった男性」の話だ。
「継母に遺骨の一部を分骨してほしいと言っても、首を縦に振ってくれない。自分たちは、父を他界した母と一緒のお墓に入れてあげたいと思っていたのに」と悔しさをにじませるのは中西啓介さん(仮名、55歳)。
中西さんの実母は40年前に他界。数年後、父親が再婚したのが継母だった。彼女自ら父親の葬儀を仕切り、遺骨も自分の手元に。四十九日法要のときに、相続の件で何度かやりとりをする機会はあったが、中西さんが一周忌法要に呼ばれることはなかった。聞いてみると父親の遺骨はすでに彼女が購入したお墓に納骨されてしまったという。
いったん遺骨を墓地に納骨してしまうと、その遺骨は墓地使用者に断りなく分骨することはできない。つまり中西さんが遺骨を取り出すには継母の許可が不可欠なのだ。
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