「父親の遺骨を継母に奪われた」55歳男性の後悔 納骨後に勃発する厳しい「遺骨の所有権争い」

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
遺骨を取り戻せた女性と、取り戻せなかった男性のエピーソードを紹介(写真:HIME&HINA/PIXTA)

「私は夫と一緒の墓に入ることができないのではないか」

奈津江さん(仮名、70歳)はそう述懐する。彼女は2年前に夫の坂田達夫さん(仮名、享年75歳)を亡くした。達夫さんとは15年前に再婚、いわゆる「熟年再婚」だった。2人の間に子はいないが、達夫さんは前妻との間に息子が2人、奈津江さんは前夫との間に娘が1人いる。

2人が再婚を決意したときは「今さら結婚という形をとらなくても」と周囲からの反対も多少はあった。しかし子どもたちはすでに成人していたため、さほど大きなハードルではなかったようだ。

奈津江さんが「亡き夫の墓に入りづらい」理由

達夫さんは坂田家の長男だった。そのため、これまでの慣例に従って遺骨は四十九日法要の際に寺院内にある先祖代々のお墓に納骨。以降は長男の和夫さん(仮名、50歳)が祭祀承継者として守っていくことになった。

当初これらの決まりについて、とくに疑問を抱かなかった奈津江さんだったが、お盆やお彼岸、一周忌法要などで親戚と顔を合わせる機会が増えるにつれ不安が増してきた。実は坂田家の親戚とは葬儀のときまで、ほとんど付き合いがなかった。長男の和夫さんとの交流はそこそこあったが、日常的に会話が弾むほどの間柄ではない。

自分が亡き後、和夫さんに遺骨を託して「坂田家のお墓に入れてほしい」とは言えるほどの関係ではないし、そもそも自分の弔いを血のつながりや深い付き合いがない人たちに託すのはお門違いなのではないかとも思っていた。

彼女のように年々、離婚や再婚などで家族関係が複雑になり、遺骨やお墓をめぐる悩みやトラブルにまで発展するケースは増えているように感じる。最近は実子と後妻の間で、または腹違いのきょうだい間で、遺骨の奪い合いが起こることも少なくない。

悩みに悩み抜いた奈津江さんは思い切って和夫さんに「達夫さんの遺骨を分けてほしい」と打ち明けてみた。

次ページ「遺骨を奪われてしまう」ケースも
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事