30万円で「民泊事業」を買った人の偽らざる本音 コロナ禍で逆風なのに、個人M&A戦線に異常あり

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コロナショックが直撃した民泊事業を“買収”する人もいる(写真:mits/PIXTA)

「価格はコロナ前の5分の1程度。買うなら『今しかない』と判断した」

そう語るのは、インターネットのM&Aマッチングサイト「トランビ」で6月、民泊事業を買収した寺田拓也さん(仮名・20代)。昨今、ネット上で事業の売り手と買い手をつなぐマッチングサイトが普及。その結果、寺田さんのように個人で事業を買収する「個人M&A」が広がっている。

寺田さんは札幌市在住。不動産会社に勤務しており、今春、新型コロナ禍による在宅勤務で時間的な余裕が生じたことで、M&Aマッチングサイトで売却案件を探すようになった。その狙いは「経営の経験を積むこと」にあったという。

「今は会社員だが、将来的に独立を考えている。そのため副業で経営感覚を身につけたかった。ゼロから起業するハードルは高いが、M&Aなら事業ノウハウなどを引き継げるため、始めやすいと考えた」(寺田さん)

3密回避に勝機

目をつけたのは、本業である不動産業と領域が近い民泊事業。ただ民泊といえば、インバウンド(訪日外国人客)の激減で稼働率が急落し、廃業が続出するなど、コロナショックが直撃した分野である。それでも買収に踏み切った理由をこう語る。

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「確かにインバウンド低迷は逆風。少なくともこの先1年は厳しい状況が続くと思う。しかし、国内の旅行者は次第に戻ってくるはず。その際、ホテルより民泊のほうが“3密”を回避でき、勝機はある」(寺田さん)

買収したのは、地元札幌の民泊事業。主要顧客をこれまでのインバウンド客から国内旅行客へと変えるため、部屋のレイアウトやベッドの種類の変更を計画している。

買収価格は30万円。加えて月々の家賃が発生するが、「仮にうまくいかなくても損失は限定的。自分のキャリアへの投資と考えている」と言い切る。

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