就活と婚活、決定的な違いはどこにあるか? 「求めよ、されど……」の時代を生きる、若者たちの理想と意志

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思い描いた理想をどんどんと切り崩される過程

多くの若者は就「活」をしているからといって、明確な「意志」を持っているわけじゃない。旧来型のシステムが壊れたから、リクナビのような新たなシステムに身を合わせただけなのだ。それが新しい時代のシステムだから、それに乗り換えただけ。そこに積極性はない。

これが就活と婚活の違いだ。就活は(家業を継ぐ人や一部の恵まれた人を除けば)生きてゆくためにはやむをえない。婚活はそれとは違って、するかどうかは価値観次第だろう。だから婚活する人たちは、婚活を始めた時点で、そもそも積極的である。この二つの間には大きな亀裂があるのだ。

じゃあ、就活と婚活との間に共通点がないのかというと、そんなことはない。共通しているのは、自分の側で相手への条件を設定しておきながら、その条件を極限まで下げてゆかなければならないという構造だ。

就活生ははじめは結婚も含めた自分の理想のライフコースを思い描く。けれど、就活とはその理想をどんどんと切り崩される過程にほかならない。そんなとき、その崩壊を見つめながら、別のライフコースを組み直し続けられるか、それが現実の就活における強さではないだろうか。

もっとも、せいぜい20代前半の若者に、崩される前提で理想を持てと求めるのが酷なのは間違いない。ついには、理想自体を持たないことで自己防衛する就活生が「賢い」ことにもなってしまいかねない。

そんな、ツライ現実を変えるには、白河の主張するように企業全体の、そして社会の「風土」を出産・育児に優しいものにしてゆくほかないけれど、社会は若者のためにそこまで変われるのだろうか。見通しは、暗い。


「週刊東洋経済」2014/4/26号:小売り激変

榛原 赤人
はいばら あかひと / Akahito Haibara

1988年生まれ。都内某大学院の社会科学分野博士課程に在籍。17歳の頃から結婚をめぐるもろもろに関心を持ち、婚活ブーム以降は、その思想的背景に注目して、机上での結婚探求を行っている。
 

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