「老害」が組織をダメにするという根本的誤解 高齢化に適応できない日本企業のジレンマ

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「メンバーシップ型」の構造の中では、労働者の権利を守るために、会社を生かすしかなくなります。一方の「ジョブ型」では、会社ではなく、ジョブが残るように、社会全体として支援していく発想になるのです。

ただ、「メンバーシップ型」の日本の組織には、間違いなく大きなメリットもあります。アメリカのようにどんどん首を切られることもなく、労働者がしっかり守られてきました。日本人は自分たちの状況をかなり悲観していますが、海外から見れば「日本はなんて幸せなんだ」と思われていたりもする。現にアメリカなんかは、平均寿命がどんどん短くなってもいますからね。

しかし、今後、これまでの雇用形態を維持しながら、75歳定年、90歳定年という時代に耐えられるのかというと、それは難しいでしょう。「メンバーシップ型」である日本が、もっとも平均年齢が長くなっているというところに矛盾が生まれ、ジレンマになっているとも言えますね。

社会保障、終末期医療について議論せよ

『ライフスパン』の読後に改めて感じたのは、社会保障をどうするのかという議論をもっと進めなければならないということですね。これは雇用問題とセットですから、やはり社会参加を促していくしかないのでしょう。

終末期医療についても考え直す時期が来るだろうと思います。日本の医療費増大の背景には、延々と延命治療をしていることがあります。本人に意識がないのに、胃ろうを施して生かしつづける。そこには「命を大切に」という感覚もあるのでしょうけど、現実には、意識がなくとも生きていれば年金が入るなど、なかなか口にはできない家族の事情もあったりするわけです。

すでにいろんな議論はあって、いっそユニバーサル・ベーシックインカムに移行すればいいという意見もありますよね。でもその代わり、既存の失業保険や年金をすべてなくすことと引き換えになる。それで果たしていいのか、もっと具体的に考えなければなりません。

年金制度も、厚労省は「破綻しない」と言っていますが、破綻しないのは「制度」であって「金額」ではありません。いまの平均的な高齢者夫婦は、正社員で勤め上げた夫と専業主婦の妻で、会社の厚生年金を含めて月額20数万円が入ってくるというのが一般的です。しかしこれも、20年後、30年後になれば、月額5万円を切るという予測もあります。そして現実に、2000年代に入ってから破綻する年金組合も出ていますよね。

そもそもいまは非正規雇用が4割で、厚生年金に入っていない人が大勢います。国民年金だけでは、到底暮らせませんし、このままでは社会保険制度だけでなく、国民皆保険制度も成立しなくなる可能性すら指摘されています。老いなき時代を迎えるための抜本的な議論を、今こそ始めなければなりません。

(後半につづく)
[構成/泉美木蘭]

佐々木 俊尚 作家・ジャーナリスト

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ささき・としなお / Toshinao Sasaki

1961年兵庫県生まれ。早稲田大学政治経済学部中退。毎日新聞記者、『月刊アスキー』編集部を経て、2003年よりフリージャーナリストとして活躍。ITから政治、経済、社会まで、幅広い分野で発言を続ける。最近は、東京、軽井沢、福井の3拠点で、ミニマリストとしての暮らしを実践。『レイヤー化する世界』(NHK出版新書)、『そして、暮らしは共同体になる。』(アノニマ・スタジオ)、『時間とテクノロジー』(光文社)など著書多数。

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